出生率が低下した時向き合わなければならなくなる別の課題とは
『2050年世界人口大減少』の原著刊行後に発表された2019年の国連推計も、人口が抑制される可能性について初めて言及した。長年にわたり国連の世界人口推計をウォッチしてきた私は、国連は大きな転換を行った、との感慨を抱いた。温暖化や食糧不足で人類は昆虫まで食べないと生き延びられない、とさえ言われてきたなか、同書の予測とは半世紀近くものずれはあるが、2100年を迎えるまでに人口が頭打ちとなる、あるいは減少に転じるかもしれないとしたのだ。
国連は合計特殊出生率が2050年には2・2、2100年には1・9になると予測している。現状が2・5であることを考えると驚きだ。まさに同書の予測を裏付けるようなデータである。
しかしながら、出生率が低下すれば、別の課題とも向き合わなければならなくなる。たとえば社会保障制度は各国で脆弱なものとなるだろう。少子高齢化のトップランナーであり課題先進国と言われている日本が、世界に先駆けて早くも直面している問題だ。日本もいまだ解決策を出しきれていないが、2050年以降、全世界共通の課題となるだろう。あと20~30年のうちに、世界中で高齢者が増え、各国はその対応に追われていく。すると、政治的エネルギーや資金を、日本のように高齢者向け施策に投入していかねばならなくなる。
そのとき、地球規模での発展的な未来は続くのだろうか。高齢者は、変化を受け入れる体力・気力が弱り、現状維持へと向きがちだ。これは、課題先進国に生きる私ならではの感覚であるかも知れないが、イノベーションを起こすには、若者が最大人数である今が「最後のチャンス」と認識したほうがよいのかも知れない。