忙しくても1分で名著に出会える『1分書評』をお届けします。
今日は尾崎世界観さん。
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「ねぇ、わたし誕生日同じなんだよ? 11月9日」
確かに11月9日なら誕生日は一緒だ。
「っていうかさ、わたしの事覚えてる?」
なんとなくうっすらと覚えてる。
「高校の友達がファンなんだって。わたしは聴いた事ないけど。ははは」
そうですか、よろしくお伝えください。
「っていうかさ、写真撮ってよ。今友達に送るから」
撮りたくない。でも断り辛い。撮るか。
「っていうかさ、写真送ったのに返事来ないわ」
そうですか。
「っていうかわたしの事覚えてないでしょ? 誕生日同じなんだよ?」
うっすら覚えてますよ。はい、誕生日は11月9日です。ついでに血液型はOです。これは違うといいな。
「あっわたし、フェス好きなんだよね」
そうなんですか。フェス好きなんですか。
「でもわたし、聴いた事ないわ」
そうなんですか。機会があったら聴いてくださいね。
「まぁ、頑張ってね」
お互い頑張りましょう。
初めて行った同窓会。二次会からだったし、中学校の同窓会かと思って行ったら小学校の同窓会だった。久しぶりに会ったら結婚していたり離婚していたり、子供がいたり。みんなよく笑って、真っ直ぐで羨ましくなった。上の会話の人を除いては。
学校と駄菓子屋と塾の狭い世界の中で爆発しそうな感情を押し殺していた小学生のあの頃のまま、自分だけ取り残されたようで情けなくなった。久しぶりに呼ばれた恥ずかしいあだ名と一緒に捻くれた心を捨てたい。
口の中でボソボソする冷め切ったポテトフライがぴったりな夜だった。
もっと頑張ろうと思った。
小学生の時好きだった国語の教科書の匂いがする。自分から理解しに行くのが勉強だとしたら、自分を理解してくれたのが国語だった。
だからこの歌集が好きだ。