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ツービート「面白い方だけ貸してくれ」伝説の真相

―― たけしさんの『ANN』と言えば、高田文夫さんですよね。高田さんの本を読むと、近衛さんから「面白い方だけ貸してくれ」って言われたと書かれてます(笑)。

近衛 いやいや、高田さんは、たぶんそう思ってるんでしょう(笑)。真相はね、最初はツービートだった。僕は、きよしさんも面白いと思ってたりしたんですよ。でも、事務所と色々キャッチボールをしてるうちに、一人でやるという発想が出てきた。そこで、副社長が高田さんに相談したんじゃないかな。ある日、副社長から「たけしでやるんなら、高田さんという人がいて、この人を絶対につけてくれ」と言われたんです。

ANN出演時のビートたけし ©ニッポン放送

―― たけしさんの『ANN』が始まったとき、木曜日のニッポン放送は、たけしさんと高田さんがスタジオの中にいて、その後にさんまさんが入るという時期があったんですね。

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近衛 ありましたね。同じスタジオで生放送ですから、1部のたけしさんと、2部のさんまさんがバトンタッチする時期がありました。しかも前の日にはタモリさんが喋っていた。

―― すごい時代ですね……。この時代の『ANN』に出演されていた方は、他にも所ジョージさんもいましたし、アーティストでは桑田佳祐さん、中島みゆきさん、松山千春さんと今も現役で第一線の方たちばかり。当時、近衛さんから見て、彼らは芸能界でずっと残るんだろうなって才能を感じていましたか?

近衛 みんな素晴らしい方ばかりですが、それを意識したことはありません。確かなのは番組が面白かったこと。ちょっと冷たいようだけど、番組が面白ければいいんです。ただ、ラジオの深夜から出た人が、ラジオの昼間の番組に行くとか、テレビに行くとか、メジャーになってゆくというのは一つのパターンだったように思います。誰かが「ラジオは時代の1番バッターだ」と言ってて、なるほどなと思った。4番バッターじゃないわけですよ。4番はメジャーな昼間の枠だったり、テレビだったりで全然いいわけです。僕は1番バッターに、思いっきりバットを振ってもらう番組をリスナーに伝えたかった。

 

あのテーマソングが生まれた都市伝説と本当のこと

―― 1980年代の始めに『パックインミュージック』とか『セイ!ヤング』といったライバル番組が次々に終わっていきますが、『ANN』だけが存続して50周年を迎えます。成功の秘訣は何でしょう?

近衛 やはり、スタッフがチャレンジを続けていったことに尽きるでしょうね。それからテーマ曲の「Bittersweet Samba」ね。これを50年変えていないのも凄いことですね。

オールナイトニッポンが始まる直前、1967年9月の編成表

―― この曲は、誰が選んだんですか?

近衛 フジパシフィックミュージック会長の朝妻一郎さんです。朝妻さんが、初代パーソナリティの高崎一郎さんから『ANN』のテーマ曲を選んでくれって言われたらしいです。それで、朝妻さんがもっていったのが「Bittersweet Samba」なんです。それだけのことなんですが、高崎さんというのは面白い人で、ここに都市伝説みたいなストーリーを作ったんですよ。本当はB面の4曲目をかけるはずだったのに、ディレクターが間違えてA面の4曲目をかけた。それが「Bittersweet Samba」だったっていう話。これをまことしやかに話して、しばらくは信じられていました。でも、もういい加減いいよねってことで、最近真相がいろんなところに書かれています。

―― ようやく真実が明らかにされたわけですね(笑)。

近衛 今も存続してるという話では、『ANN』というブランドができてるのも大きいですね。まあ、その部分が弱い部分でもあるんですけどね。作り手は、ブランドがあると頼っちゃうから。でも、そう言いながらもみんなチャレンジしてきてる。『ANN』に出た人は、単にプロモーションの場じゃなくて、何か他と違うものを頑張ろうというのがあるんじゃあないでしょうか。