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「我々は最大の被害者」と公式発表

「新天地教会」は1984年、教祖である李マンヒ氏が創設し、韓国全国におよそ1100カ所の教会や付属施設、機関を持つ。信徒は自称約24万人(韓国政府は約21万人と推定)。海外での布教活動も活発で、最近では中国・武漢にも進出していたという。

 李マンヒ総会長は大邱市で信徒から感染者が出ると、「昨今の病魔事件は新天地が急成長したことを悪魔が阻止しようとして起こしたこと。このすべての試練、迷いに勝ちましょう」(朝鮮日報、2月22日)とSNSで信徒によびかけたと伝えられた。

 大邱市には9300人あまりの信徒がおり、韓国政府は新型コロナ感染症の症状が見られる信徒全員の検査を進めていたが、「家族にも新天地教会の信徒であることを隠している人も多く、連絡がとれない信徒も700人近くいた」(同前)ことから、全国の信徒の名簿を提出することを新天地教会に求め、26日、確保したと伝えられた。全信徒の検査を進めるともしている。

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 23日、ソウル市内にある新天地教会の礼拝所を訪ねると、21日から閉鎖され、すでに3回の防疫作業が行われたと同じ建物で働く人が教えてくれた。ドアには集会などを自制するよう通達するソウル市の紙が無造作に貼り付けられていた。

閉鎖中のソウル市・新天地教会(著者提供)
閉鎖中のソウル市・新天地教会に貼ってあるソウル市の通達。「感染病流行に対する防疫措置実行のご案内」とある(著者提供)

 前出の人物は、「ここ数年で教会が借りる階が増えていって、出入りする人が目に見えて増えていた。特に、中学生から大学生までの若い層が多く、いつ学校に行っているんだろうと思うこともありました。教会に泊っているのか、朝、学校に出て行く子とすれ違ったりもして、異端になぜのめり込むのかと歯がゆかったです」と話していた。

 建物の前で話を聞いていると、高齢の女性が話しかけてきて、聞けば新天地教会の信徒で80代。閉鎖されていると話すと、心底困ったような顔をして、「十一租(収入の10分の1を献金すること)を収めなきゃいけないのに」と途方に暮れていた。

「閉鎖の連絡はなかったのか、礼拝場所が変わったのではないか」と聞くと女性は急に押し黙ってしまった。新天地教会では、大邱市の感染拡大を信徒のせいとされていることに「我々は最大の被害者」と公式発表しており、「信徒には余計な話をしないよう箝口令を敷いている」(同前記者)といわれていたが、事実のようだった。