韓国でも感染者が急増している新型コロナウイルス。感染者数は4000人を突破している(3月2日午前0時時点)。この韓国での感染拡大のきっかけとなったのが、新興宗教団体「新天地イエス教証しの幕屋聖殿」(以下「新天地」)だ。

「新天地」をめぐっては、他のキリスト教団体に潜入して乗っ取りを狙う布教活動や、「刈り入れ屋」と呼ばれる“スパイ”の存在など、秘密主義的な活動が報じられている。

 合同結婚式で有名な「統一教会」、“セックス教団”として話題になった「摂理」など、どうして韓国ではカルト的な新興宗教が次々に生まれるのか。京都府立大学准教授で日韓近代宗教史が専門の川瀬貴也氏(48)に聞いた。

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「新天地」とは何者か?

「新天地イエス教」の行事の一幕(教団の公式YouTubeチャンネルより)

――いま問題になっている「新天地」とは、どういう団体なのでしょうか?

 1984年に李萬煕(イ・マンヒ)氏によって始められたキリスト教系の新興宗教です。韓国のキリスト教系の団体の中でも、“異端”という意味では、いまや「統一教会」に替わって代表格と目されている存在です。規模については、今回の新型コロナウイルス対策のために、韓国政府に約21万人分の信者名簿を提出したと報じられています。

「新興」とはいっても、その教義はむしろ韓国キリスト教系の新興宗教では「伝統的」なものです。一言でいえば、「この世は悪に満ちていて、正しい信仰を持っている私たちだけが生き残ることができる」という考え方です。

他教会の信者をスパイ的に抱き込む「秘密の布教」

――韓国社会のなかでは、どのような存在だったのですか?

 今回のコロナ問題が明るみに出るまで、彼らは非常に見えづらい存在でした。なぜかといえば、彼らが「秘密主義」だったからです。

 たとえば、「新天地」の信者たちは“スパイ”として他のキリスト教の教会に潜入し、その教会の信者の抱き込みを狙って活動していました。他教会の内側から信者を「新天地」の信者に変えていくのです。正統派のキリスト教徒にとってみれば、本来の信仰を妨げて誘惑してくる存在なのです。

「新天地イエス教」のソウルの拠点 ©AFLO

 外部の人を勧誘する場合も、彼らはいきなり自分たちの教会では布教しません。教団が作った喫茶店やビルの一室など、「アジト」的な関連施設で布教をして、勧誘を受けた人自身が「新天地」から勧誘を受けていることに気がつかないように工夫されている。気づいたら「新天地」の信者に囲まれて自分も信者になっていたという場合が多い。