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母親は「少し笑みを浮かべているように見えた」

 心愛さんの小学校は冬休みが終わり、7日から再開したが、あざがひどく通わせられず、寝室に閉じ込めるようになった。勇一郎被告が会社に行っている間、母親は心愛さんの様子をLINEで報告。「また自分から飲み物くださいって」「しかも『甘いものない?』とか。まじでお前何様か。むかつくね」などと一変、勇一郎被告の虐待に同調していた。

 結局、心愛さんは24日午後11時ごろ、自宅浴室で亡くなった。勇一郎被告の通報で野田市の自宅アパートに警察や消防が駆け付けた。体や洋服が濡れた状態で風呂場に倒れていた心愛さんはすでに死後硬直が始まっていた。

 勇一郎被告が警察に屋外で事情を聴かれる間、救急隊員は母親に心愛さんが亡くなった状況を聞いた。「なぜお子さんは濡れているんですか」。救急隊員が問うと、母親は「私は下の子を寝かせていたので、わかりません」と話したが、救急隊員の供述調書によると、その際、母親が「少し笑みを浮かべているように見えた」という。聞いていた他の隊員に目配せすると、やはり異常な表情に疑問を感じていたようだったという。

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栗原心愛さん

「勇一郎の監視や束縛でどうすることもできなかった」

 母親は証人尋問で、検察官になぜ心愛さんを助けなかったのか、警察や児童相談所に通報しなかったのか問われると、「心愛を助けてあげたかったが、勇一郎の監視や束縛が強くてどうすることもできなかった」と繰り返した。また、勇一郎被告の虐待に同調した理由についても、「言い訳になるかもしれませんが、次女の世話もありながら、毎日のように勇一郎が心愛に虐待するのを見て、私は正直限界でした。その気持ちを心愛に向けてしまった」と述べ、「とても後悔しています」と涙を流した。

栗原勇一郎被告の初公判で傍聴券を求めて並ぶ人たち(2月21日、千葉地裁前) ©共同通信社

 勇一郎被告の携帯電話から見つかった動画には、被告から虐待される心愛さんが「ママー助けて、お願いママ」と母親に何度も助けを求める様子が映っていた。だが、母親が救いの手を差し伸べることはほとんどなかった。

 もっとも近くで虐待を見ていた母親にも助けてもらえず、しまいには父親に同調して虐待された心愛さんの絶望はどれほどだったか。DVを受けていたとはいえ、母親の罪は重いだろう。

亡くなった栗原心愛さん(当時10歳)に黙祷をささげる千葉県野田市の職員 1月24日、千葉・野田市役所 ©︎時事通信社