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深い悲しみをどう生きるか――愛する妹が亡くなる前に書かれた“宮澤賢治の詩”

深い悲しみをどう生きるか――愛する妹が亡くなる前に書かれた“宮澤賢治の詩”

2020/03/08

「あなたに出会えてよかった」と伝えることで始まるもの

 逝った大切な人を思うとき、人は悲しみを感じる。だがそれはしばしば、単なる悲嘆では終わらない。悲しみは別離に伴う現象ではなく、亡き者の訪れを告げる出来事だと感じることはないだろうか。

 愛しき者がそばにいる。どうしてそれを消し去る必要があるだろう。どうして乗り越える必要などあるだろう。賢治がそうだったように悲しみがあるから生きていられる。そう感じている人はいる。出会った意味を本当に味わうのは、その人とまみえることができなくなってからなのかもしれない。

 邂逅の喜びを感じているのなら、そのことをもっと慈しんでよい。勇気を出して、そう語り出さなくてはならないのだろう。

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 あなたに出会えてよかったと伝えることから始めてみる。相手は目の前にいなくてもよい。ただ、心のなかでそう語りかけるだけで、何かが変わり始めるのを感じるだろう。                               

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悲しみの秘義 (文春文庫)

英輔, 若松

文藝春秋

2019年12月5日 発売

深い悲しみをどう生きるか――愛する妹が亡くなる前に書かれた“宮澤賢治の詩”

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