疾風のごとく、球場を去る男
オンとオフの切り替えがしっかり出来ている人に成功を収めている人が多いというのはビジネスの世界でも芸能界でもよく言われることである。もちろんプロ野球界も同じだ。千葉ロッテマリーンズでもっとも切り替えがしっかりとしているのは間違いなく井口資仁内野手だ。とにかくホームゲームの試合後は帰るのが早い。疾風のごとく、球場を去っていく。少し目を離すともうロッカールームにその姿はない。だから広報としては何か打ち合わせをしたい事項があるときは試合前に行ってしまうか、もしくは徹底マークをするというのが鉄則だ。それはマリーンズに移籍した09年から一貫している。
「帰るのが早い? そうだね。でもそれは若い頃からずっとだね。別にメジャーでそう感じて実践しているわけではないよ。ホークス時代から自分はそういうスタイルだった」
てっきりアメリカンスタイルを導入しているのかと思い、その点を聞くと、意外にもそれ以前、はるか前からそうだったとの事。その姿勢は一貫しているようだ。どうしても選手は試合後に勝利の余韻に浸ったり、敗れれば、ずっとロッカールームで考え事をしてしまうことが多い。が、そこの切り替えが大事なのがプロ野球。ペナントレースは143試合の長丁場で、すぐに明日は訪れて試合が行われる。どんなに劇的なサヨナラ勝利をして嬉しくても、ショッキングな負けを喫して悔しくても、平常心で少しでも早く気持ちの転換が必要なのだ。
「そうだね。元々、あまり引きずるタイプではないけど、そういうメリハリは大事。球場にいてしまうと、どうしてもいろいろと考えてしまうし、負けているとなおさらグチグチと言ってしまう。そういう風に傷のなめ合いをしてしまうのは嫌だよね」
どんなに劇的な一打を打っても試合後はシャワーをさっと浴びて、私服に着替え新たなる次の日へと向かう。逆に悔しい結果に終わっても、ため息をついてロッカーでボーッと天井を見上げているのではなく自宅に戻り美味しい食事をとったりテレビを見たりして明日に向けて気持ちを前に向かせる。プロ野球ではそのような精神がどうしても必要となってくる。
「打てなかったから、試合後に練習するというのはどうかなとも思う。試合が始まる前に最善の準備をして向かっているはずだから。結果に左右されて練習量やメニューを変えたりするのは違うような気がする。自分は朝、自宅にいる時から球場入りして試合に入る前ですべての準備を整える。だから試合後は帰るだけ」