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【ロッテ】次世代に伝えたい井口資仁のオンとオフの切り替えの早さ

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/08/07
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「意味のない過ごし方はして欲しくない」

 もちろん試合後に気になってフォームチェックをすることもある。しかし、それは稀。基本的には悔いなきように試合前にすべての準備を完了している。特にこの選手の朝は早い。ナイターでも午前6時には起床しているのが通常。そこから治療したり、ウエイトトレーニングを行ったり自宅のパソコンでデータ分析をしたりしながら、球場入りまでの時間を濃密に過ごす。そして球場入りしてまた全体練習までしっかりと準備を繰り返す。だから試合後はどんな結果が出ても感情の変化でスケジュールを変更することはない。ユニフォームを脱ぎ、シャワーをさっと浴びて着替え、自宅に戻り、ゆっくりとした時間を過ごす。

「ほぼ1年間、ルーティンは一緒だね。やることをしっかりとやっているのならば問題はない。若い子はどうしても早く球場に来ないといけないとか、逆に先に帰るのはどうかということで球場にいる時間が長かったりするけど、意味のない過ごし方はして欲しくない」

 思えばマリーンズ移籍1年目の09年に劇的なサヨナラ満塁本塁打を放ったことがあった。この時もヒーローインタビューを終え、メディアの取材対応を終え、少しばかり時間が経つと、もう私服姿で駐車場に向かう廊下を颯爽と歩いていた。まだチームメートの誰もが劇的なサヨナラ勝利の余韻に浸り、ロッカールームでユニフォームを脱ぎながら談笑を繰り返している時にその中心人物は一人、スイッチを切り替え、明日に向かっていた。「お疲れ。また明日!」と言い残して球場を後にした背番号「6」。あの時の頼もしい背中が今も忘れられない。大きな仕事を一つ終え、次なる任務へと向かうプロフェッショナルな背中だった。私がオンとオフの切り替えの大切さを肌で感じ、男はこうあるべきだと悟った瞬間だ。

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 そんな井口資仁内野手は今シーズン限りで現役を引退する。レジェンドプレーヤーのオンとオフの切り替えの素早さを目の前で見ることが出来る日々を貴重な体験として胸に刻み、今後の次なる世代へと伝えていきたい。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3640でHITボタンを押してください。

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