「日本は常に最も近い隣国だ。(新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ)共に危機を克服し未来志向の協力関係へ努力しよう」
3月1日、韓国の文在寅大統領は日本の植民地統治に抵抗して1919年に朝鮮半島で起きた「三・一独立運動」を記念する政府式典でこう演説した。演説はコロナ対策が主題となった。
例年に比べると対日批判のトーンは抑制されたものであったが、こうも言及した。
「(日本は)過去を直視してこそ傷を克服できる。(韓国は)過去を忘れることはないが、われわれは過去にとどまることもない。日本もそうした姿勢を見せてほしい」
懸案の元徴用工問題や元従軍慰安婦を巡る問題には直接言及しなかったものの、日本に対して釘を刺す姿勢は見せた。
日韓関係の危機は遠ざかっていない
日韓問題は新型コロナ対策などもあり、小康を保っている状態にある。
「いま両国の間で最大の懸案事項になっている元徴用工判決で日本企業に賠償命令が出た問題でも、差押えられた日本企業の資産が2月にも現金化されるという予想も出ていましたが実行されなかった。現在の観測では4月の韓国・国政選挙前の現金化はないだろうと言われ始めています」(ソウル特派員)
だが、必ずしも危機が遠ざかったわけではない。日韓関係において、何かあれば歴史問題が持ち出され、再燃するというのが常だった。元徴用工問題も、未だ現金化問題が燻っており課題は何も解決していないという状態なのだ。
改めて解説すると、元徴用工問題とは太平洋戦争中に朝鮮半島出身者が日本に徴用され労働を強いられたとして、本人や遺族らが日本政府や企業に補償を求めている問題である。日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決した問題との立場をとり続けている。
しかし韓国サイドでは賠償を求める動きが続いた。2018年には、元徴用工が日本企業を訴えた裁判で、韓国大法院(最高裁)は日本製鉄(元・新日鉄住金)、三菱重工に対して、相次いで賠償を命じる判決を下したのだ。