11月26日のソウル。光化門近くのリマビルで、小さな騒動が起きていた。
リマビルの6階、ここには「日帝強制動員被害者支援財団」のオフィスが入っている。
「この日は、財団から遺族会などの幹部や委員に対して緊急招集がかかっていました」
そう語るのは太平洋戦争被害者団体の幹部の1人だ。11月23日に韓国政府が下したGSOMIA継続の決断以降、日韓関係は徴用工問題解決に向けての新しい胎動が始まっていた――。
韓日の企業に寄付を募って被害者に支給する案が法案化
同日夜。ソウル聯合ニュースは次のようなニュースを報じた。
〈韓国議長が寄付金支給案を法案化 徴用被害者ら1500人に約280億円
韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が強制徴用問題の解決策として日本側に提案した案を法案にまとめたことが26日、分かった。韓日両国の企業、政府、国民が参与して「記憶人権財団」を設立し、被害者1500人に総額3000億ウォン(約277億円)の慰謝料を支払うのが骨子〉
文議長は11月5日に早稲田大学で行った講演で、徴用工問題解決に向けて日韓の企業と国民から寄付を募って被害者に支給する「1プラス1プラスアルファ」案を持っていることを明かしていた。法案化はこの「1プラス1プラスアルファ」をベースとしたもので、早ければ年内にも国会に提出される可能性があるという。
中央日報によると、日韓議員連盟の河村建夫幹事長(自民党)は、文議長案について「(徴用工問題の)解決策はこれだけだ」と評価したと語ったという。
議長秘書官らが被害者団体の代表らに説明を行ったが……
前述の「日帝強制動員被害者支援財団」のオフィスには文議長の特使として補佐官や政治スタッフ5人が訪れ、被害者団体の代表などを前にして、文議長案である「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者などの支援に関する特別法改正案」についての説明を行った。
文議長案の骨子となる「記憶人権財団」は、行政安全部の下部組織である「日帝強制動員被害者支援財団」を格上げした形で設立され、慰謝料や慰労金を支給する事業を行うのだという。
しかし文議長スタッフに対しては、被害者団体の代表たちから次々と質問の声があがったという。