「日韓基本条約を基本とするならば、まずは韓国政府が補償するべきではないのか?」
「徴用工裁判で日本企業の資産が差し押さえられ、現金化されようとしている事態についてはどう説明をするのか?」
文議長スタッフと被害者団体代表らの会合はマスコミ非公開。40人ほどが収容出来る会議室からは、怒声が響くなど騒々しい雰囲気に包まれていた。
「財団側は被害者遺族らに50万ウォンを支払うという提案を持ちかけ、その代わりに文議長法案へ同意するように求めました」(出席者)
「記憶人権財団」の元の団体の正体
結論から先に言うと、文議長案、そして同案を評価したという河村建夫議員の言葉は、いずれも徴用工問題の本質を直視出来ていない軽薄なものでしかない。
まず「記憶人権財団」に昇格される「日帝強制動員被害者支援財団」とはどのような団体なのか。
同団体については、5月31日配信の「ルポ・徴用工裁判『その不都合な真実』#4」で詳述している。改めて説明を加えると、2014年6月2日に発足した「日帝強制動員被害者支援財団(以降・ポスコ財団)」は、韓国企業・ポスコの出資金をベースに被害者支援を目指して設立された団体だった。
同団体が設立された背景には、日韓基本条約において日本政府から支払われた金が、韓国政府によって被害者らに正しく届けられていなかったという歴史があった。
日韓基本条約に伴う資金を得た企業は13もある
ポスコ、旧名・浦項総合製鉄は日韓基本条約に伴う請求権資金などを注入して設立された企業だ。現在では年間売上高60兆ウォン(約6兆円)を誇る世界的鉄鋼企業に成長した。
「漢江の奇跡と呼ばれる韓国経済の高度成長は、この日韓基本条約に伴う請求権資金を流用して成し遂げられたものです。資金を得た企業は13企業にも上ります。主なところでは、ポスコを始め、韓国電力公社、韓国鉄道公社、韓国道路公団、ハナ(外換)銀行、KT、KT&G(タバコ公社)などがあり、いずれも韓国の経済基盤、インフラを支えた企業ばかりでした」(韓国人ジャーナリスト)
本来、被害者補償に使われるはずだった資金は経済投資に回された。ポスコ株主総会で被害者から批判を受けたポスコは、まず30億ウォンを2回に分けて拠出し、現在まで計60億ウォンを財団に出資している。そして将来的には総額100億ウォンの出資を行うと約束したのだ。