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2020/03/15

 グレンさんが言う「外国人の視点」とは、単に語学力の問題ではない。

 たとえば、日本人なら誰でも徳川家康のことは知っている。だから、関ヶ原の合戦について人に説明する場合、いまさら家康がどんな人物であるかという情報は端折って、両軍の対立の背景や合戦場での布陣、戦いぶりを時系列に沿って熱心に語ろうとするだろう。それは相手が小学生でも同じだ。だが、外国人相手では、家康とは何をした人、まずそこから説明しなければならない。しかも、家康の人間性や武将としての特徴、歴史上果たした役割や時代背景などをなるべくコンパクトに整理してわかりやすく伝える必要がある。

「外国人」への理解を深めるために

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 これは言うほど簡単なことではない。知識が足りないからではない。本来伝えたいのは「天下分け目」の関ヶ原の合戦の面白さである以上、そこで相手がつまずいてしまうと、話をどこまでさかのぼればいいのか途方に暮れてしまうからだ。日本人相手だと、普段はそういう場面はまずないが、外国人相手だと、事前に想定していた説明内容や構成を検討し直さなければならなくなる。

 日本人からすると外国人の質問は、ときに無邪気で唐突ゆえに、我々を当惑させる。たとえば、「どうして日本の城には石垣があるのですか?」といきなり聞かれて、即座にポイントを押さえて答える自信がある人がどれほどいるだろうか。「日本の城には石垣があるもの」。それを疑うことなく常識として受け入れているため、そこに疑問をはさまれたとたん、何をどこからどう説明すればいいのか、一瞬頭が空白になるのだ。それは慣れ親しんだ思考回路を換骨奪胎して組み立て直す作業といってもいい。だが、それこそが「外国人の視点」を理解するプロセスなのである。

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