池上彰さんと山里亮太さんが共演するMBS(毎日放送)の深夜番組『生! 池上彰×山里亮太』から、激動する東アジアに焦点を絞った『知らないと恥をかく東アジアの大問題』(角川新書)。池上さんが新型コロナウイルスへの対応をはじめ、気になる東アジアの厄介な大問題について解説した「おわりに」を特別公開します。

独裁国家ともつきあっていかなければいけない

 山ちゃんとの対談を基にしたこの本の編集が終わったところで、中国・武漢で新型肺炎患者(新型コロナウイルスに関連した肺炎)が続出というニュースが飛び込んできました。中国では2002年にもSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生し、多数の患者と死者が出ました。それに比べれば、情報がそれなりに発表されていると当初は思ったのですが、実際は、やっぱりそうではありませんでした。

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 習近平国家主席が2020年1月20日になって「全力で感染防止に取り組まなければならない」と指示を出し、感染に関する情報は「直ちに発表しなければならない」と訓示しました。これ以降、患者数は激増しました。つまり、習近平国家主席が「感染情報を隠すな」と指示したので、現場は正確な数字を出すようになったということです。それまでどれだけ情報が隠蔽されていたことか。

 独裁者が存在する国家や企業は、全員がトップの顔色をうかがっています。自分では何も判断できなくなります。今回の新型肺炎も、こうした弊害を明らかにしたといえるでしょう。

 私たちは、こうした独裁国家ともつきあっていかなければならないのです。

韓国との関係も“過去最悪”の状態

 一方、韓国との関係も“過去最悪”の状態が続いています。日韓はどうして対立するのか。日本経済新聞・前ソウル支局長の峯岸博氏は、「順法」の日本と「正義」の韓国との対立だと指摘します。日本は、「日韓請求権協定」によって国と国との約束が結ばれたのだから、これは守らなければならないと考えます。一方、韓国は軍事独裁政権時代に国民不在で勝手に他国と結ばれた約束は「不義」であり、それを正すのは「正義」だというのです。

「3・1独立運動」から101年、ソウルで記念式典での文在寅大統領 ©ロイター/AFLO

 このように他国の「内在的論理」を知ると、たとえ納得できなくても、「理解」することは可能になるかもしれません。何事も、相手の内在的論理を知ったうえでつきあうことが必要なのです。