少数派を無視するインドの国家運営
フィリピンではロドリゴ・ドゥテルテ大統領が2016年に就任して以来、麻薬がらみの犯罪者は警察官が現場で射殺してもいいという驚きの方針を打ち出して以来、多数の“犯罪者”が裁判抜きで処刑されてきました。しかし、その結果、フィリピンの治安は急激に改善され、フィリピンに投資する外国資本も増えてきました。ドゥテルテ大統領は高い支持率に支えられています。
人権より治安。治安が改善されれば経済が上昇。これが現実なのです。
一方、インドではナレンドラ・モディ首相が就任して以来、「全戸にトイレを」を合言葉に衛生環境の改善に努めてきました。インドでは自宅にトイレがなく野外で用を足す人が大勢いたのですが、首相肝いりの施策で環境が改善されています。思えば日本も東京オリンピックまでは、いまでは信じられないくらいゴミや汚物にまみれていたものです。
インドのモディ首相は、「ヒンズー至上主義者」として知られています。インド国内でヒンズー教徒を優遇し、結果的にイスラム教徒に不利になる施策が相次いで打ち出されています。
モディ首相にしてみれば、全国民の80%を占めるヒンズー教徒の支持さえ得られれば政権を維持できるという計算があるのでしょうが、国内でのイスラム教徒の不満は高まっています。決して健全な国家運営とは言えません。
アウンサンスーチー氏の人気が急落
国家運営といえば、ミャンマーの国家顧問にまで上り詰めたアウンサンスーチー氏の人気が急落しています。かつては軍事政権に抵抗して自宅軟禁にされ、ノーベル平和賞を受賞(1991年)した女性でしたが、いまや国内少数派のロヒンギャ族の大量虐殺の事実を否定したり居直ったりしています。
アウンサンスーチー氏が自宅軟禁を解かれた直後、私は氏にインタビューできることになってミャンマーに飛んだのですが、二度にわたってドタキャン。会えませんでした。氏を知るミャンマー在住の日本人は異口同音に「彼女は建国の父アウンサン将軍の娘としてチヤホヤされ、わがままいっぱいに育った王女さまだよ」と称しました。それはいくら何でも言い過ぎだろうと当時は思ったものですが、やはり本性を現したというところでしょうか。
アジアは混沌としています。それだけつきあうのが困難な国もありますが、それだから面白いとも言えるのです。