文春オンライン

「デジタル・デトックス」というアメリカの病的流行

2020/03/19

ネット関連の依存症を抱えている人は最大40パーセント

 さらにオルターは、デジタル依存が精神や脳にも問題を起こす様子を描く。

「最近の研究によると、最大40パーセントの人が、メール、ゲーム、ポルノなど、ネットに関連した依存症のいずれかを抱えている。別の研究では、被験者となったアメリカの大学生のうち48パーセントがネット中毒で、残りの40パーセントは境界線または危険性がある状態だった。被験者の大半は、ネットとのかかわりを尋ねる質問に対し、どちらかというと負の影響があると答えた。オンラインで過ごす時間が長すぎるせいで、仕事、人間関係、家族との生活に支障をきたしている、と」

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「マイクロソフトの実験で2,000人の若い成人被験者を対象に、コンピューター画面に出てくる一連の数字や文字に注意を集中させる実験をしたところ、結果ははっきりとわかれた。ソーシャルメディアで過ごす時間が長い被験者は、そうでない被験者に比べて、集中して課題をこなす能力が低くなっていたのだ」

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人々は、気づかないうちにほとんどコントロールされている

 またジャーナリストのニコラス・カーは2011年のピューリッツァー賞を受賞した著書『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること』でインターネットが人間の知性を変容させ、退化させていると警鐘を鳴らしている。

「ウェブページをスキャンするのに費やす時間が読書の時間を押しのけるにつれ、一口サイズの携帯メールをやり取りするのに用いる時間が文や段落の構成を考えるのに用いる時間を締め出すにつれ、リンクをあちこち移動するのに使う時間が静かに思索し熟考する時間を押し出すにつれ、旧来の知的機能・知的活動を支えていた神経回路は弱体化し、崩壊を始める」

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 オデルは、デジタル依存の時代における「自由意志」についてこう語った。

「人生の多くのことは、自由意志とコントロールされ自動化された意志との間にあるはず。現在の人々は、気づかないうちにほとんどコントロールされている。まったく何もしない空白である思索の時間は、わたしたちが普段コントロールされているということを思い起こさせてくれる、重要な時間だと思う」