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「常時接続のネット中毒は精神のジャンクフード」

 脳科学やAI研究の権威もデジタル中毒の問題点を語る。マイクロソフトの共同創業者である故ポール・アレンが私財を投じて設立したシアトルのアレン脳科学研究所は、世界の脳科学の最先端を行く。その所長を務めるのがクリストフ・コッホ。日本でも『意識の探求』や『意識をめぐる冒険』などの著作で、意識研究の第一人者としてよく知られている。コッホは私の取材に「今日、わたしたちはますます不幸になっている」と言う。

「常時接続のネット中毒は精神のジャンクフードです。常にSNSをチェックしている状態は、人々の精神を不安定にします。食べ過ぎや飲み過ぎを制限するのと同じように、ネットの利用を自主規制しなければいけません。ただし、それには自制心と精神的な訓練が必要ですが」

©iStock.com

 またAIの創成期から現在までの歴史をまとめた大著『サイバネティクス全史:人類は思考するマシンに何を夢見たのか』を執筆したジョンズホプキンス大学高等国際学部の戦略研究学教授トマス・リッドは、私とのフェイスタイムによるインタビューで、コンピューターからAIにいたるフィードバック・ループ(注:フィードバックを繰り返すことで結果が増幅される仕組み)の危険性を語る。

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「SNSに写真やテキストを頻繁にアップして、すぐに反応を得ることを過剰に期待している人々は、フィードバック・ループの穴に陥っている状態ですね。それは人々が深い問題について考えなくなり、複雑な問題について意見を述べる力をなくし、結果的に人々を不幸にするものです」

AIの最前線ではいち早くデジタルを制限している

 経済界ではAIへの過剰な期待が高まる今日だが、AIの最前線はこのようにいち早くデジタルを断つ、または制限をかける生き方を模索し始めている。さらに、これからAIが人間の仕事を代替し、より多くの判断を下すようになることで、私たち人間が、従順な動物的に、またはルーティンを繰り返す機械的になる可能性が高まっている。『動物と機械から離れて』は、その危険性への「炭鉱のカナリア」だ。AIやデジタル・デバイスを自律的に使い、時に自律的に離れることが、ますます動物化または機械化される人生への抗いとなるはず。本書の帯に言葉を寄せてくれた思想家の東浩紀の警句のように「人間が人間であり続けるために、意図的な努力が必要な時代が近づいている」のだ。