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〈「検査対象(件数)」が理不尽に絞られているのは、おそらくPCR検査が「行政検査」として「公費負担」で行われてきたためです。PCR検査に「保険」を適用して「民間検査会社」を活用すればいいのです。ようやく3月6日から保険適用となりましたが、「治療」を実施するには、「確定診断(検査)」が必要です。症状としてどんなに重くとも、「確定診断(検査)」がなければ、抗HIV薬や抗インフルエンザ薬など候補にあがっている薬の「投薬治療」もできません〉

〈イベントの自粛や学校の臨時休校を要請するにも、本来であれば、エビデンス(現状の「市中感染率」やその推移)が必要ですから、その点でも、「検査による流行の現状把握」は極めて重要となります〉

「多くが軽症で感染力が絶大」だから“怖ろしい”新型ウイルス

重症者の大量発生による“医療崩壊”を防ぐには?

 岡田氏が最も危惧しているのは、病院が流行や院内感染の拠点となり、医療のキャパシティーを超えるほど重症患者が発生し、他疾病患者の診療や治療も麻痺するという“医療崩壊”だ。これを防ぐには、“患者の仕分け”が不可欠だという。

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〈電話窓口である「帰国者・接触者相談センター」(国内流行が始まっているので「新型肺炎相談センター」などと改称すべきです)は、すでにパンク状態で、流行が拡大すれば、今後さらに混雑するはずなので、「持病のない人」「高血圧や糖尿病など持病のある人」「人工透析患者」「妊婦」などと窓口を分ける。それだけでも“患者の仕分け”が一定程度できるはずです。

 外来患者に対しては、医療機関が流行や院内感染の拠点になるのを防ぐために、2009年の新型インフルエンザの時のように、「一般患者の外来」とは別に「感染患者・疑似症患者」専用の「発熱外来」を設置する。そして「CT検査」を行い、肺炎が疑われる場合には、民間検査会社に、「PCR検査」を依頼して「確定診断」を得る。

患者で溢れかえる武漢市内の病院 ©AFLO

 その際、重要なのは、すべての医療機関内で、「感染患者・疑似症患者」と「一般患者」の「外来」「入院」「検査」などの区域を明確に区別し、“動線”が交差しないように設定することです(こうした区分は、「高齢者介護施設」でも重要です)。

 一つの医療機関内で、そうした区分が容易でないこともあるので、その場合は、「発熱患者・感染患者に特化した医療機関」と「非感染の一般患者のみを診療する医療機関」を別に設定すべきです〉

夏季までにピークを作らないことが重要

 岡田氏は「COVID-19は、『新型=未知のウイルス』です。“未知”である以上、今後を完璧に予測することは不可能です」と断りつつも、今後の見通しについて、次のように指摘する。

〈SARSと近縁の今回の新型ウイルスは、温帯地方では「高温・多湿」の夏季になれば、おのずと流行が下火になる可能性があります。夏季までにピークをつくらなければ、気温上昇にしたがって流行もおのずと収まっていく可能性があります。そうすれば、被害を最小限に食い止められるはずです〉

出典:「文藝春秋」4月号

 岡田氏が寄稿した「『医療崩壊』最悪のシナリオ」は「文藝春秋」4月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。@gekkan_bunshun のフォローをお願いします。

文藝春秋

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致死率2%でも「医療崩壊」最悪のシナリオ