ちょうどこの曲の制作中、1995年1月17日には阪神・淡路大震災が起こり、さらにリリースの5日後、3月20日にはオウム真理教による地下鉄サリン事件が発生した。そんな状況のなか、マスメディアでは「この社会をどうするか」が声高に語られるようになる。小室によれば、「WOW WAR TONIGHT」にはそうした風潮に対抗する狙いもあったという。
《そんなことが声高に語られる時代に、僕はみんなが直面していた小さいけれど大変なことや、そこからの変革・脱出をイメージした曲をつくろうと思い立った。社会を構成しているのは一人ひとりの人間たちで、みんな誰もが自分たちの生活をなんとかやっていくことのほうが切実な問題だと感じたのだ。(中略)僕が書いたのは、「なんとか自分を守って生きている」「でもなにかを起こしたい」というような、みんなが普遍的に持っているリアルな気持ちだった。僕は“たかが音楽”でできることは、小さくても大変なことで頑張っている人たちを応援することだと考えていた》(※4)
「ん? 温泉?」というんもあった
小室は制作にあたり、ダウンタウンのビデオをたくさん見ながら考えるうち、浜田のいまやっていることと、忙しい自分の生活とオーバーラップしてくるものがあり、共通項で書けることがすごく出てきたという(※3)。浜田もまた、この曲をもらって、《俺をどこまでわかっとるんか知らんけど、うまいこと気持ちにハマるようにしてくれたな》と思った(※1)。たしかに同曲の歌詞には《全然 暇にならずに時代が追いかけてくる/走ることから逃げたくなってる》など、二人の心境に重なったと思われる部分は多い。それ以上に浜田を感心させたのは、《温泉でも行こうなんて いつも話してる》というフレーズだった。ここはたとえば「一人で車を転がして、一人の時間がほしい」とカッコつけた書き方もできたはずなのに、それをあえて温泉を出してきたのがすごいというのだ。
《最初に詞だけ見たら「ん? 温泉?」というんもあったけど、あのメロディーに乗ると、決してオヤジしてないし、聴いてる人みんなの気持ちにもピッタリくるやろなとも思うし。俺が歌うからというんもあったかもわからんけど》(※1)