レコーディングはわずか1時間半
番組の収録が終わってから、小室のスタッフにも「小室さん、ノリであんなこと言いましたけど、今は忙しいから勘弁してください」と言われたという。それでもダウンタウン側のスタッフがあらためて小室に確認したところ、「ああ、やりましょうか」とわりと軽い調子で返事があった。これを聞いて浜田は「なんや、言うてみるもんやな~」とのんきに構えていたが、いざレコーディングの日を指定されると「えっ、ええ~!」と慌てたらしい(※1)。彼にしてみれば、まさにひょうたんから駒
レコーディングはわずか1時間半くらいで終了した。場所は小室がワンフロアを借り切ったマンション。フロアに6つほどあるどの部屋でもレコーディングができるよう、機材が全室に入っていた。浜田はまず1室に通されると音を聴かされた。音と一緒に口ずさんでいると、「ああ、いけますね。それなら本番、行ってみましょう」と小室に言われ、隣りの部屋へ移動する。そこは普通のリビングで、ヘッドホンをつけてマイクに向かって歌っていると、家でカラオケをやっているみたいな感じだったという。部屋には小室と2人きり。ただ、部屋の天井近くにはカメラがついており、小室はそのカメラに向かって、別室にいるスタッフへマイクで指示を出していた。
「どやねん、CD、売れてんのか?」
このあと編曲などの作業が進められ、ジャケットには小室の提案で
当の浜田にはなかなかヒットの実感が湧かなかった。そんなある日、当時4歳だった長男(現在ミュージシャンとして活躍するハマ・オカモト)が『ピノキオ』のビデオがほしいというので、近所の大きな電器屋に入るレコード店へ行った。ビデオをレジに持っていくと、店員がみんな浜田を見ている。そこで何も言わないのも変なので、「どやねん、CD、売れてんのか?」と訊ねると、「売れてますよ、1位ですよ、今。見てください!」と壁に貼ってあった順位を見せられた。《それでも「ほんまかぁ?」みたいな気分は、まだ、抜けへんかった》と、彼は女性週刊誌の連載エッセイの第1回で書いている(※1)。
仕事の現場でも浜田はしばらく「すんません」を連発することになる。