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 また、隔離命令が出されたのは62人に対してだけだったことにも疑問を感じる。サンフランシスコから乗船した客も自室に留まって自主隔離していたのか、また、乗員が乗客にどのような形で食べ物などをサービスしていたかは不明だ。

「ダイヤモンド・プリンセス号」の場合、適切な防護装備を与えられず、ガイダンスやトレーニングも受けていない乗員が乗客に対応していたことが問題だった。乗員は同じ手袋を身につけたままで多くの部屋に食べ物を運び、乗客と対面していたことが、船内感染が広がった原因ではないかと言われている。

サンフランシスコ港ではなくオークランド港が選ばれた“裏事情”

 サンフランシスコ沖まで近づいた「グランド・プリンセス号」だったが、サンフランシスコ港から寄港を拒否されてしまう。CDCはまず、症状のある人々のウイルス検査をするというのだ。それは、船を着岸させて検査するのではなく、検査キットを沿岸警備隊がヘリで空輸し、乗船している医療チームに検査させるという大胆な手法だった。この検査では、検査を受けた46人中、19人の乗員と2人の乗客が陽性、24人が陰性で、1人は判定不能という結果となった。

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 しかし、このやり方では時間がかかるという理由から、他の乗客は下船後、隔離場所で検査されることになった。「グランド・プリンセス号」を非商業用の港に寄港させることになったが、すぐには寄港先が見つからず、4日間も洋上を漂流した後、3月9日、サンフランシスコ郊外のオークランド港に寄港したのである。

3月9日オークランド港に寄港した。乗客は自室のデッキに自由に出ているが…… ©AFLO

 なぜ、オークランド港が選ばれたのか? 客船を寄せる十分な幅があること、一部の乗客が隔離されるトラヴィス空軍基地が近いことが理由だと説明されているが、それに対し、地元の医療関係者は、ロサンゼルス・タイムズ紙で異を唱えた。

「ウエスト・オークランド地区には、昔から、声高に強く反対しない、低所得のマイノリティー層が居住しているからでしょう。そんな理由で、オークランド港に寄港を決めたんだと思います」

約2400人乗客「全員下船」はダイヤモンドの教訓か

 無事寄港した「グランド・プリンセス号」だったが、「ダイヤモンド・プリンセス号」とは違い、まず最初に、寄港後、乗客全員を下船させることとなった。これは、乗員乗客を船内で検査し、船内で隔離したために船内感染が発生、697人の感染者と7人の死者(3月13日現在)を出した「ダイヤモンド・プリンセス号」から得た大きな教訓かもしれない。

 しかし、CDCは、単に、医療ガイドラインに従っただけとも考えられる。