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「女性活躍は大事だけど、本人次第だよね」ジェンダー多様性から目を背ける日本の経営者たち

ジェンダー平等は利益を生む。それが世界の常識です

2020/03/23

日本は先進国でもっとも男女格差が大きい国であり続けている

 女性幹部を増やすと言いながら、経団連は企業任せ、企業は女性の意識任せ。「女性活躍は大事だけど、本人次第だよね」というのは、つまり知ってはいるけどやる気はないことの表れです。ちなみに2017年にOECD(経済協力開発機構)のモニカ・カイザー社会政策局課長は、「日本の女性幹部を増やすにはクオータ制が有効な手段になる」と指摘しています。

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 世界経済フォーラムが毎年12月に発表するグローバルジェンダーギャップ指数の昨年のデータでは、日本は153カ国中121位でした。今回も前回も前々回もその前も、先進国で最下位。つまり、日本は先進国でもっとも男女格差が大きい国であり続けているのです。内訳を見ると、教育や健康面での差はないのに、政治経済分野における男女格差が非常に大きいことが特徴です。これをなんとかするべく、202030が提唱されたのではなかったのか。

性差別をする組織に優秀な人材は集まらない

 そもそも、なぜ女性幹部を増やす必要があるのでしょう。意思決定層に占める女性の割合が極端に少ないと、女性は社会の成員として重視されなくなるからです。男女の賃金格差や昇進の格差は解消せず、女性は男性の補助要員かつ無償または安価なケアワークの担い手として地位を固定化されることになります。

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 男性の意思決定層から見たときに都合の良い働き手、つまり長時間の過酷な労働にも文句を言わずに耐え忍ぶ働き手が好まれ、出産などでキャリアを調整する必要がある女性は戦力外として排除されます。

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 最近だと、東京医科大や聖マリアンナ医科大などの入試で女性が不当に点数を操作されて不合格になっていた事件がありました。「医師の仕事はハードすぎて、女性は出産や育児で辞めてしまうから育成しても無駄である」という理由から、そのような不正が半ば公然と行われていたのです。

 企業の採用でも「いやー、成績順で採用すると女性の方が多くなっちゃうから」などと平気で言う人が珍しくないですが、それも女性は主戦力じゃないよねという暗黙の合意が出来上がっているからです。れっきとした性差別であるにもかかわらず。そして、そうした女性差別のコストとして、男性は過酷な長時間労働に甘んじなければならないのです。しかし、そのような組織には、もはや優秀な人材が集まらなくなりつつあります。