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「女性活躍は大事だけど、本人次第だよね」ジェンダー多様性から目を背ける日本の経営者たち

ジェンダー平等は利益を生む。それが世界の常識です

2020/03/23
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女性取締役がいる企業の方が好業績であることが明らかに

 そして何より、ジェンダー平等は利益を生むのです。ILOによると、世界70カ国13000社の調査結果で、ジェンダーの多様性を促進する企業は回答全体の57%を超えており、管理職のジェンダー多様性がある企業の約4分の3が5~20%の利潤増となっていることが報告されています。

 世界第3位の資産運用会社SSGAでは、取締役会に女性が一人もいない企業の取締役専任議案に反対票を投じる方針を打ち出しました。それもやはり、女性取締役がいる企業の方が好業績であることが明らかになっているからです。

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 もしもあなたの会社の幹部が、業績アップのために改善するべきことを知っていて、それをやらないと投資家からの信用を失うことがわかっており、専門家からも是非やるべきだと奨励されていて、実際やってないものだからグローバルな競争の場でもかなり出遅れているのだけど、「わかってるわかってる。社員がそれぞれ頑張って。でもぶっちゃけ、うちの会社、いま別に困ってないよね?」などと宣って事態を甘く見ているのなら、それは無能な幹部ですよね。つまり、リーダーとしての資質に欠けるということになります。

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「こんな男の世界に入れた自分は大したものだなあ」

 もちろん「業績アップのためにするべきこと」とは、ジェンダー平等の実現です。それを日本の財界のトップたちが率先してやる気がないのだとしたら、男女格差解消への理解以前に、リーダーシップに問題があるということに他なりません。いくら採用数を増やしても、女性がキャリアを積んで幹部になれる環境を積極的に整えなければ、役員を目指す女性は増えないでしょう。

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 かくいう私も、かつて放送局の社員だったときには、典型的な男社会に生きていました。2019年の民放労連の調査では、在京テレビ局の女性社員の比率は22.6%、局長は8.3%、役員は4.7%ですが、主要な業務である報道・制作(バラエティ、ドラマなど)・情報制作部門では、女性局長は0.0%です。0.0%!

 25年前に私が入社した頃も、役員は全員おじさんで、「長」のつく役職も大抵男性でした。「こんな男の世界に入れた自分は大したものだなあ」などと思っていたのですが、次第に性差別的な風土に気づきました。