エピソードに込められたメッセージ
このエピソードがファンの知る事になったのはオープン戦がなかった3月12日だ。新型コロナウイルス感染症対策の観点からオープン戦が無観客となり、ファンサービスなども中止を余儀なくされるなど閉塞感が漂うプロ野球の現状においてなにかファンと触れ合う企画が出来ないかと中村奨選手と話し合いを行っていた。そして生まれたのが球団の公式Instagram上でファンからの質問を募集し、回答をするというプラン。早速、実行に移され、400件近い質問が一日で届いた。Instagramに何回もファンからの問いに回答を投稿。最後の投稿で「忘れられない思い出はありますか?」という質問に回答した。中村奨が、あえて最後まで残していた質問だった。
この事は瞬く間にファンの間に広まり、多くの反響と感動を呼んだ。田中靖が困っている中村奨に手を差し伸べたエピソードにはマリーンズ選手たちのこんな時だからこそ助け合いながら歩んでいこうというメッセージが込められている。なにか困っている人がいたら助けるという当たり前のことが、なかなか出来ない今日の社会。新型コロナウイルス感染症の影響で色々な事が自粛され、活動が制限され、人と人との触れ合いが出来なくなっている。こんな時だからこそ人の繋がり、優しさがより大事になってくるのだ。中村奨は今こそ胸の中にずっと残っていた温かい思い出を披露する時だと考えた。
直接の触れ合いが出来ない今。SNSというツールを使った発信がマリーンズとファンを繋ぐ大事な接点となっている。これからも千葉ロッテマリーンズはこのように色々な事を発信し伝えていきたい。そして一日も早くいつもの生活が戻りスタジアムが活気に溢れる事を願っている。ただ今は我慢。ファンとマリーンズは心で繋がっている。一緒に耐えながら楽しみな球春到来を待ちたい。
梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)
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