怒号、火炎瓶、シュプレヒコール、催涙ガス、群がるメディア。香港に久しぶりに「非日常」が戻ってきた。2月29日夜、警官隊とデモ隊の大規模な衝突が発生したのだ。
この月末は、昨年8月31日に発生した警官による乗客暴行・逮捕事件(8.31事件)からちょうど半年目にあたっていた。デモ参加者側は、8.31事件の暴行により死者が出たことを香港警察側が隠蔽したと信じており、事件があったとされるMTR太子(プリンス・エドワード)駅への献花や、付近にある旺角警察署への抗議行動を繰り返してきた。
ジャーナリストを襲いはじめた香港警察
2月29日も夕方から数百~1000人程度の群衆が太子駅付近に集まりはじめ、献花をおこないながら隣接する旺角警察署を激しく罵倒した。
対して警察側は再三にわたり献花を撤去し、19時半ごろから群衆やメディア関係者との小競り合いを開始して胡椒スプレーを噴霧。やがて、火炎瓶を投げたり路上のバリケードに放火したりするデモ隊に対して、警官側が見境なく催涙弾を打ち込み、ときに逮捕や殴打を加える、すこし前までの香港デモではお馴染みの光景が再現された。
私は昨年6月~11月にかけて香港デモを何度も取材したが、2月29日夜の衝突では、警察側が私たちのようなメディアや、一応は中立的な立場である救護人員まで平気で攻撃のターゲットにしてきたことに驚かされた。少し前から警察側の方針が変更されたらしい。
とはいえ、そもそもこの日の大規模衝突は久しぶりの出来事でもあった。中国政府が新型コロナウイルスの広範な流行を認めた2020年1月20日以降、香港デモは表向きは低調になっていたからだ。