コロナを理由に中国人を締め出せ?
新型コロナ騒動の勃発以来、香港デモはその形を変えていた。香港人は日本人と比べてウイルスへの警戒心が強く、感染の広がりを嫌がって、従来のような大人数を動員する平和的デモが中止されたほか、「勇武派」と呼ばれる過激な抗議をおこなう勢力の活動もかなり沈静化したのだ。
かわりに起きたのは、デモ系の流れをくむ医療関係者たちが労組を作って、防疫を理由に「中国との境界の全封鎖」を求めてストを打ったり、また新型肺炎患者の受け入れ施設に指定された病院に受け入れ反対デモをおこなったりする動きだった。
また、市内を覆った「黄色経済圏(デモ支持派商店)」の店舗が、手洗いの徹底など防疫対策を呼びかけつつ「中国人客の立ち入りお断り」を意味するメッセージを(かなり丁寧な文面とはいえ)盛んに出すようにもなった。
デモのシンパたちにとってのコロナ騒動は、ヘイト的な色彩を薄めつつ大陸の中国人を締め出せる、いい口実になっているようにも見えなくはない。
いっぽう、コロナ防御モードに入った香港は、はやくも1月25日には防疫レベルを最大に引き上げ、幼稚園と小中学校(香港の「中学」は日本の高校も含む)の一斉休校を決めたほか、政府機関職員を中心にリモートワークへの切り替えを進めたほか、2月上旬には中国大陸との境界の大部分を封鎖した。
街の人通りは大幅に減り、朝のラッシュ時の地下鉄でもときに席に座れるほど。マスク着用率はほぼ100%で、レストランをはじめあらゆる施設の入り口にアルコール消毒液が置かれている。私が宿泊した尖沙咀のマルコポーロ香港ホテルも、スタッフによれば「宿泊者数は普段の8~9割減」だった。
香港は過去、2003年のSARS流行、2009年の新型インフルエンザ流行をともに経験した、「感染症慣れ」した都市でもある。
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そんな香港のコロナ対策と、その周囲でうごめく人々についての現地レポートは、「文藝春秋」4月号および「文藝春秋 電子版」に掲載の「『中国を拒否』できない香港の苦悩と希望」をお読みください。
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「中国を拒否」できない香港の苦悩と希望