世界的に新型コロナウイルス拡散の勢いが止まらない中、これまでのところ日本では他国ほど感染者が爆発的に増えていない。この間、安倍政権は大規模イベント自粛や小中学校などの一斉休校、中韓両国などからの入国規制強化措置など様々な対応を打ち出してきた。それに対して多くのメディアは対応が後手にまわっているとか、求職や失業を余儀なくされた人たちへの手当が不十分だなどと批判的な報道を続けてきた。

 ところが3月に実施された新聞社やテレビ局などによる各種世論調査の結果を見ると、安倍内閣の支持率は下がるどころか一部の調査では上がっている。一斉休校など政府の対応についても、6割以上が「評価する」と回答している。戦争など国家が危機に直面した時はしばしば為政者の求心力は強まり、国民の支持が増えることが多いが、安倍政権とコロナウイルスの関係もそうなのであろうか。

内閣支持43%、不支持41%(NHK調査、2020年3月)など、直近の各社世論調査でも安倍内閣支持率は「変化なし」か「微増」が多かった ©文藝春秋

森友・加計問題、桜を見る会、大臣辞任……不祥事に強い安倍政権

 内閣支持率を振り返ると、安倍政権は不祥事にも強い政権である。2012年に安倍氏が首相に復活して以後、安倍政権は「森友・加計問題」をはじめ常に不祥事を抱えてきた。ところが国会で野党から追及され、首相や官僚らの答弁がしどろもどろになったり、公文書が政府に都合がいいように改ざんされていたことが明らかになっても、内閣支持率は大きく下がることなく今日まで推移してきた。

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 昨年から今年にかけても、河井案里参院議員(自民党)の公選法違反事件とそれに伴う夫の克行氏の法相辞任、自民党を離党した秋元司衆院議員の逮捕(収賄容疑)などと不祥事が続いている。さらに経緯が不透明な東京高検検事長の定年延長問題まで起きた。首相主催の「桜を見る会」問題も事実関係が解明されないまま時間が過ぎている。

 公文書の破棄や不透明な政策変更など、安倍政権の体質が露骨に現れた問題がこれだけ次から次へと表ざたになるというのは政治的にはかなり危機的な状況である。一昔前であれば内閣支持率が急落し、マスコミの批判が強まり、さらに支持率低下に拍車がかかるという悪循環に陥って、やがて与党内から首相退陣論が出て、首相は辞任に追い込まれていただろう。