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(ポイント1)「他よりよさそう」

 まずよく言われることだが自民党内に安倍氏に代わる首相候補がいない点だ。朝日新聞の世論調査では安倍内閣を支持すると答えた人に「なぜ支持するのか」を聞いている。結果は常に「他よりよさそう」という回答が50%を超えている。質問の方式は異なるもののほかのメディアも同じ趣旨の質問を行い、ほぼ同様の結果を得ている。つまり多くの国民が「安倍首相には問題が多いが、じゃあ他に誰がいるのか」と考え、とりあえず安倍内閣を支持しているのである。

(ポイント2)「自民党批判の受け皿なし」

 二つ目は、自民党にとって代わる政党がないということだ。政党支持率を見ると、自民党の支持率は長く30%台にとどまっている。1980年代には50%台を記録していたことを思えば、自民党の支持率はかなり低下した。ところが立憲民主党などほかの政党の支持率は軒並み一桁にすぎず、数字のうえでは自民党と政権を争うような存在とはなっていない。

 前述した2017年7月の調査では、内閣支持率と共に自民党の支持率も34%から 30%に低下したが、野党第一党の民進党(当時)も8%から5%に落ちている。つまり野党が政権批判や自民党批判の受け皿になっておらず、代わりに増えるのは「支持政党なし」という構造になっているのだ。そして、一時的に行き場を失った国民は数カ月後に元に戻っていることが数字に現れているのである。

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©文藝春秋

(ポイント3)「20代、30代の支持」と「スマホ普及率」

 3点目だが、内閣支持率を年齢別に分析するとより重要な点が浮かび上がってくる。1980年代までの自民党長期単独政権時代、内閣支持率や自民党支持率は年齢が上になるほど増える右肩上がりだった。ところが近年、これが逆転し、20代、30代の方が高く、年齢が上になるほど低くなっている。

※朝日新聞・世論調査 https://www.asahi.com/politics/yoron/ (年代別の支持率を見ることが出来る)

 例えば「森友・加計問題」や「桜を見る会」などの問題がメディアで大きく取り上げられると、50代以上が政権に対し批判的な反応を示す。一方で若い世代の反応は非常に鈍い。こうした現象を「若者の保守化」と指摘する研究もある。しかし、若い世代の反応を昔ながらの「保守か革新か」というようなイデオロギー的基準で色分けするのは無理があるだろう。

 そもそもこの世代は閣僚の逮捕や首相が関係する不祥事などに関する情報にほとんど接しておらず、無関心なのだ。こうした問題についての質問に「わからない」などという回答の率がほかの世代より高いことがそれを示している。

 ここに一つ興味深いデータがある。今は当たり前のように使われているスマートフォンの普及率の統計だ。総務省の『情報通信白書』(令和元年版)によると、スマートフォンの世帯保有率は2010年9.7%だったが以後、29.3%(2011年)、49.5%(2012年)、62.6%(2013年)と急激に増加し、2015年に7割を超えて以後、今日に至るまで7割台を続けている。使っているのはもちろん若い世代が中心で、今は20代から40代の7割以上がSNSを利用し、新聞やテレビに代わってスマホで情報を得ているのである。