国内でも、経路のわからない感染が増え続け、感染者が爆発的に増加する「オーバーシュート」が懸念される現在。わたしたち国民にも、政府やメディアからの情報を適切に受け取り、冷静に理解し、賢明な行動をすることが求められている。
新型コロナウイルス感染症に関して、政府やメディアの出している情報は適切なのか、感染症専門医に話を聞いた。協力いただいたのは、第一線で新型コロナウイルス感染者の治療に携わっている、国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志医師だ。(前後編の後編/前編を読む)
※インタビューは3月21日(日)に行われました。掲載時の情報は25日(木)のものです。
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感染症専門医が警鐘を鳴らす、不正確な報道
──先生は、ヤフー個人などのメディアでも精力的に発信されていますね。そのモチベーションは、どこからくるのでしょうか。
忽那医師(以下、忽那)メディアは、今回の新型コロナウイルス感染症報道でも、過剰な表現をしがちで、中には間違った情報を発信している場合もある。感染症はナイーブな問題で、専門性が必要とされるので、自らも発信しようかと考えた次第です。
──過剰な報道や、不正確な報道があるとのことですが、いくつか例を教えてください。
忽那 たとえば、先日「診断遅れで重症化」というタイトルの記事がヤフーに転載されていました。新型コロナウイルス感染症は、まだ治療法がないので、早期発見することと重症化を防ぐことは関係がありません。ミスリードなタイトルだと思います。
また、1月に武漢で原因不明の肺炎が44例報告された後、「深センで原因不明の肺炎」と題された記事が掲載されたこともありました。原因不明の肺炎は、臨床ではしばしば経験されることで、決して珍しいことではないのですが、この記事だけを読むと、まるで深センでも新たな別のウイルスによる感染があったかのように勘違いしてしまいます。続報もありませんでした。
また、テレビでは専門家を名乗る人々が、「PCRをどんどんしろ」と言っています。
──彼らは、専門家ではないのですか。
忽那 感染症専門医は日本では少ないです。専門医の資格を取得しているのは1500人程度いますが、呼吸器科の医師などを除いてほんとうに感染症を専門としている人となると、国内で1000人いないと思います。
韓国と日本、検査対象が「大きく異なるわけではない」
──「韓国に比べてPCR検査が少ない」ということが、一時期マスコミで言われていましたが、どうお考えになりますか。
忽那 日本では症状のある人や接触者を中心に検査をしていますが、ライブハウスなどのクラスターが発生したところでは、無症状の接触者も検査しているので、大きく検査対象が異なっているわけではないと思います。