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PCR検査の対象は「日韓で大きく異ならない」 新型コロナ患者を診る医師が報道を危惧する理由

国際感染症センター・忽那賢志医師インタビュー#2

2020/03/26
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──今、欧州では急激な集団感染、つまり「オーバーシュート」が起こっていて患者が激増していますが、日本は、それほど厳しい制限をしているわけではないのにも関わらず欧州のようになってはいません。この違いはどう考えられていますか。 

忽那 日本では、人混みに行かないとか、密閉された空間に長時間とどまらないなどの、啓発や、行動の制限がうまくいっていると思います。ただ、韓国で、教会で一気に感染が広がったように、オーバーシュートが起きると、医療崩壊が起こりかねません。 

CDCが望まれる理由

──日本の首相は、イギリスのジョンソン首相のように、専門家と一緒に会見をすることもなく、説明が不足しているように見えます。政府に望むことはありますか? 疾病対策予防センター(CDC)を作った方がいいという主張もありますが。 

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忽那 CDCのメリットは、専門家集団なので、独立性があり、通常方針をCDCが決めれば、政治が方針に従うようになっていることです(今回の新型コロナでは、必ずしもそうなっていない部分もあります)。継続した研究や訓練も可能です。アメリカのCDCは、何年か毎に、新型インフルエンザを想定した訓練・シミュレーションを行っています。それに対して、日本の専門家会議は問題が起きたその時々に招集されます。 

 CDCは、独立性を保たなければならないし、厚生労働省などの方針を追認するだけの組織になっては意味がありません。日本に専門家が少ないので、作れるのかという疑問もあります。前身となるような機関を作り少しずつ大きくするのが現実的かもしれません。

 

高齢者、持病を持つ人は過剰なくらい注意を

──一般の方に、今一番伝えたいことは。 

忽那 新型コロナウイルス感染症は、8割の人が、誰にも感染させておらず、特定の条件のもとで広がりやすいことが知られています。3つの要素がある場所、①換気の悪い密閉空間、②多数が集まる密集場所、③間近で会話や発声をする密接場面です。 

クラスター発生リスクの高い3つの密(首相官邸HPより)

 高齢の方や持病のある方は、手洗いをはじめ、過剰なくらいに注意をしたほうがいいでしょう。密閉された空間に行かない、高齢者施設には面会に行かない。病院にも、行く頻度を減らす。コロナウイルス感染は病院の中で広がりやすく、コロナウイルスの一種であるMERSが病院の待合室で感染した例もあります。東京は、まだ新型コロナウイルスが蔓延している状況とはいえませんので、軽い風邪症状での受診は勧められません。 

 どうなったら受診すればいいかは、地域や、家族に新型コロナウイルス感染を診断された人がいるのか、症状の重さなどで変わってきて、一律には言えませんが、持病のある方は、辛かったら早めに受診しましょう。 

(注:東京都の小池知事は、25日、感染者の急増を受けて、現在を「感染爆発の重大局面」と位置付け、週末の外出自粛要請を行った)

写真=榎本麻美/文藝春秋

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