旧村上ファンド系投資会社の動きが活発だ。「レオパレス21」や「東芝機械」などの株を大量取得し、株主価値の向上を求めて、株主提案を積極的に行っている。まるで2000年代前半に「物言う株主」として日本経済を席巻し、一世を風靡した村上ファンドが復活したかのようだ。一方で村上財団を設立し、中高生向けの金銭教育に力を注いでいる。その様子はNHK「ザ・ヒューマン」でも紹介された。いま、村上世彰氏は何を考えているのか? 渦中の「生涯投資家」に話を聞いた。

N高投資部の報告会で1年間の投資教育を振り返る村上氏 

N高投資部の特別顧問を務める

「高校生とかそういうことじゃなく、投資である以上、勝ってほしかった」
 
 3月6日、「N高投資部」の初年度の報告会が開かれた。N高投資部は、インターネット教育で知られるN高等学校の課外活動のひとつ。実際の株式投資を通して“生きた金銭教育”を提供することを目的に、村上財団のバックアップによって昨年、設立された。

 44名の部員に対して一人20万円を財団が提供し、実際に株取引を体験してもらう。損失が出ても本人負担は一切なし。村上氏は特別顧問として4回にわたり講義をし、個別面談やレポート審査も行うという力の入れようだった。この日は、その1年間の活動報告会。合計すると1430万円の投資に対し、1243万円のリターン。13%ほどの元本割れとなった。

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 冒頭の発言は、司会者が「高校生としてこの成績はどうです?」と訊ねたのに対し、村上氏が答えたもの。その決然とした口調には、企業に対して厳しい態度で経営の改革を迫った、往時の面影を彷彿とさせるものがあった。

日本で初めて敵対的TOBを仕掛ける

 村上氏のインタビューを紹介する前に、ここ数年の株取引を巡る動向と、村上氏との関わりをスケッチしておこう。最近の経済ニュースで、敵対的TOB(株式公開買い付け)という言葉を頻繁に耳にするようになった。企業買収を巡って、買われる側の会社の経営陣が同意しないなかで、その会社の株式を買い集めることだ。

  2019年、大手商社の「伊藤忠」がスポーツ用品大手の「デサント」に敵対的TOBを仕掛け、成功している。最近では、旅行大手の「エイチ・アイ・エス」が不動産業の「ユニゾホールディングス」が反対するなかで、ユニゾの株を買い増そうとして話題になった。

   敵対的TOBを日本で初めて行ったのが、実は村上氏率いる村上ファンドだった。2000年、「昭栄」に対し、敵対的TOBを敢行。他の大株主の反対もあって不成立となったが、株主が経営者を監視する「コーポレート・ガバナンス」を日本で初めて提起した出来事だった。

昭栄への敵対的TOBを宣言する村上氏(マンガ『生涯投資家』第3話より)
 

   しかし2006年、村上氏はインサイダー情報をもとにニッポン放送株を買い付けた証券取引法違反の疑いで東京地検に逮捕、起訴される。村上氏はファンドを解散し、個人の投資家とて活動の拠点をシンガポールに移してしまう。村上ファンドに続く、アクティビスト(=物言う株主)の活動も、その後の日本では根付くことはなかった――。