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世界の30億人以上がロックダウン状態 封鎖は3形態

 今や世界の30億人以上がロックダウン状態にあるが、封鎖は3つの形態に分類できる。

(1)中国の習近平国家主席とSARS(重症急性呼吸器症候群)の英雄、鍾南山氏主導のフル・ロックダウン型。イタリアやスペインが追従
(2)東北大学の押谷仁教授と北海道大学の西浦博教授率いる厚生労働省のクラスター対策
(3)前出のファーガソン教授のチームが作った英国モデル

 中国の国家統制型フル・ロックダウンは人の接触を遮断して新型コロナウイルスの感染をシャットアウトするため効果てきめんだが、経済的な影響が底知れない。日本は経済的な影響を最小限に抑えるため“巨大津波”が出現する前にクラスターを虱(しらみ)潰しにする戦略だ。

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※写真はイメージです ©iStock.com

 2009年の新型インフルエンザの流行後、英国でも周到にパンデミック対策を練り上げてきた。その柱がファーガソン教授の感染症数理モデルだ。基本的には西浦教授の数理モデルと共通している。しかしその英国でさえイタリア、スペインの惨状を目の当たりにして動揺する。

 EU離脱ではパフォーマンス頼りだったジョンソン首相だが、今回は科学と医学の声に従い、行動計画に基づきチームプレーに徹している。計算違いは、教職員組合の反発で予定より早く一斉休校に追い込まれたことと、政府の助言に従わない国民が思っていた以上に多かったことだ。

 しかし、12週間にわたって自己隔離を強いられる高齢者や基礎疾患のある人計150万人に必要な食料や医薬品を届けたり、病院への搬送や電話での話し相手を引き受けたりするボランティアを英政府が募集したところ、わずか24時間で募集数の倍の50万4303人から応募があった。命の危険を顧みず、引退した高齢の医師1万1000人が現場復帰し、最終年度の看護・医学生2万4000人も第一線の医療に参加する。

“対ウイルス国民戦争”を勝ち抜くには首相も、省庁も、自治体も、官僚も、公務員も、医師も、看護師も、介護士も、科学者も、教員も、一人ひとりの国民もそれぞれの役割を果たす必要がある。一時はお花見と“コロナ解禁ムード”に浮かれた日本人にその覚悟はあるか。

※写真はイメージです ©iStock.com

【英国で外出禁止令が発動するまで】

◆3月3日、感染者51人、死者0人

 ボリス・ジョンソン英首相が(1)封じ込め(2)遅延(3)研究(4)緩和の4段階からなる行動計画を発表。「ハッピーバースデーを2回歌いながら手を洗おう」と呼びかける。

◆3月9日、感染者321人、死者5人

 ジョンソン首相が「遅延フェーズの準備に入る」と表明。

◆3月12日、感染者590人、死者10人

 ジョンソン首相が「多くの家族が彼らの愛する人たちを失うことになる。熱や咳のみられる人は1週間自宅で自己隔離して」と呼びかけ。政府首席科学顧問が、免疫を持つ人が一定割合まで増え、感染を防ぐようになる「集団免疫」に言及して世界中の批判を招く。休校や大規模集会禁止の措置はとらず。

◆3月16日、感染者1543人、死者55人

 ジョンソン首相はこの日から毎日記者会見。前回から一転「生命を救い、人々を守る」決意を表明。(1)1人でも高熱か長く続く咳の症状があれば2週間、家族全員が自宅に留まる(2)市民全員に自宅勤務と、パブ・クラブ・レストラン・映画館・劇場を避けることを呼びかける。ファーガソン教授が批判に応えて感染症数理モデルを公開。

◆3月18日、感染者2626人、死者104人

 ジョンソン首相が20日から学校やカレッジ(中等・高等教育機関)、保育園の一斉休校に入ると発表。NHS病院では新型コロナウイルス・シフトが敷かれる。

◆3月23日、感染者6650人、死者335人

 ジョンソン首相が国家非常事態を宣言。生活必需品の購入や健康のための運動を除き原則、全国的に外出禁止令。違反者は警察が摘発。

(筆者注・感染者、死者数はworldometerによる)
https://www.worldometers.info/coronavirus/country/uk/