[ロンドン発]3連休が明け3月25日になって、東京都内の新型コロナウイルス感染者41人が新たに確認され、小池百合子知事は緊急記者会見で「感染爆発の重大局面だ」として週末の外出自粛を都民に要請した。週末限定とは言え、東京ロックダウン、首都封鎖が現実味を帯びてきた。
筆者が暮らす英国では23日夜、外出禁止令が発動された。テレビ演説で、「数十年で最大の脅威」だと訴えたボリス・ジョンソン首相の感染が27日確認され、首相官邸で自己隔離することになった。
筆者は外国特派員協会(FPA)に所属するキーワーカー(緊急時に不可欠なサービスを提供する労働者)なので、1日中、プレスパスを首にぶら下げ、ロンドンの自宅周辺や中心部を取材して回った。
咳が出た時、背中に冷たい視線が突き刺さる
いつもは超満員で乗れないこともある地下鉄や英国名物2階建ての赤色バスもガラガラ。誰も乗っていない車両もある。地下鉄駅の入り口には「絶対不可欠な用件以外では利用しないこと」「他の人との間は2メートル開けて」と注意するポスターが掲げられている。
英国の新聞は今もフィート(30.48センチメートル)を使っているが、ポスターは外国人観光客にも分かるようにメートル表示。地下鉄で見かけた乗客は全員マスクを着用していた。エレベーターは空気が悪く咳が出た時、ハンカチで口を覆ったものの背中に冷たい視線が突き刺さる。
風邪ぐらいではかかりつけ医さえ診てくれない
欧州はアジアと違ってマスクをする習慣がない。マスクをしなければいけない状態なら外出しない。それが公衆衛生のマナーだ。風邪ぐらいでは病院どころか、かかりつけ医(英国ではGPと呼ぶ)さえ診てくれない。抗生剤を処方してくれることなどまずあり得ないのだ。現在ではマスクやスカーフで顔を覆っている通行人もいるし、中にはビニールの手袋をしている人もいる。
神経質なほど予防が徹底していた中国人カップルも見かけた。マスク着用は当たり前だが、他の男性とニアミスが発生した瞬間、女性が消毒スプレーを取り出し、男性が通り過ぎた空間にシュッシュッと散布した。
いつもは観光客でいっぱいのトラファルガー広場やピカデリーサーカスも閑散としている。バッキンガム宮殿ではカップルが交代で記念撮影していた。写真を撮ってください、と頼む相手が見当たらないからだ。