サイコパスを支配するサイコパス「スーパープレデター」
米国では2000年代になってスーパープレデターという概念が現われました。サイコパスを支配するサイコパスを指し、サイコパスを通して利益を得ようとする存在です。米国では警察も怖れるといわれる10代後半から20代前半のギャングのリーダー格を先生、教授、博士、ドクターと呼んでいました。『博士ルーム』の『博士』というネーミングがどういう概念からきたのかはわかりませんが、スーパープレデターという概念を知っていて使ったのであれば、自分をどう分析していたのか」
チョは「博士ルーム」を運営しながら、実生活では保育園のボランティアなども行っていて、その二面性に注目する犯罪心理学者もいる。「博士ルーム」の実態は捜査が始まったばかりでまだ不明な点も多い。チョ・ジュビンが「博士ルーム」を運営していた「博士」だとされたが、別の犯罪心理学者は、「チームで動いていた可能性もある」と指摘している。
チョは冒頭の身元公開で、“悪魔発言”の他にも、ケーブルテレビ局・JTBC社長や元光州市長らの名前を実名であげ、「迷惑をかけた」と謝罪した。JTBCは朴槿恵前大統領弾劾のきっかけとなったタブレットパソコンの存在を暴き、当時アンカーだった社長は一躍時の人となった。いずれもチョにより脅迫されたり、だまされたりしており、JBC社長は殺害までほのめかされたことが明るみにでた。ふたりとも、要求されるまま送金しており、JTBC社長は2000万ウォン(約200万円)を振り込んでいるが、詳細はまだ闇の中だ。
悪魔という表現も自己顕示欲を満たすため
「有名人の名を口にしたのはメディアや世論の関心を『n番ルーム事件』から逸らす意図もあったでしょうし、また、そうした誰もが知る人物でも簡単に操れる、意のままにできるという、自分の偉大さを誇示する目的もあったでしょう。悪魔という表現を使ったのも自己顕示欲を満たすためだった」(前出プロファイラー)
異例の身元公開の背景には世論がある。青瓦台(大統領府)のHPにある国民請願の掲示板に書き込まれた「テレグラムn番ルーム(犯人を)身元公開およびフォトラインに立たせてください」には5日間で史上最高となる200万人あまりの賛同の声が集まり、文在寅大統領も署名に言及。警察も動かざるを得なくなった。