韓国では、新型コロナの話題も“吹き飛ばしている”。そう書いても大げさではない。同国社会を揺るがす、性犯罪事件が発覚した。“n番部屋事件”。

 主犯格の3人がスマホのチャッティングアプリ、「テレグラム」の上に「1」「2」「3」番などと番号のついたチャットルームを作成。そこで性的動画や写真の製作・流布・販売をした事件だ。被害者は現在分かっているだけでも74人、うち未成年者が16人。このチャットアプリに 3 万人の購買者、26 万人もの入場者が 存在した。

被害者は面接の際に個人情報を提供

 事件の始まりは2018年上旬からと韓国警察は把握している。現在明らかになっている被害者の74名は「援助交際のアルバイト」などの名目で募集され、面接の際に個人情報を提供させられた。容疑者はこれを基に脅迫。性的動画・写真を撮影し、チャット上で公開することを強いた。被害者の中には「生活費に困っていて他に方法が思いつかず、アルバイトに応募した」という、裕福ではない家庭の子どももいた。

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 2019年秋、 大学生の取材グループのリークにより知られ始めた。同年11月には左派メディア「ハンギョレ新聞」が報道。その他のメディアが一気に報じ始めたのは今年3月12 日、13 日頃からだった。主犯のひとり、チョ・ジュビン(24歳・無職)が逮捕されたからだ。

チョ・ジュビン容疑者(中央) ©AFLO

性犯罪の被疑者では初めて報道陣のカメラの前に

 主犯格と疑われる男は、報道陣のカメラの前に立たされた。韓国では通常、これを行うのは殺人犯。性犯罪の被疑者では初めてのことだ。 韓国では政府に対し、オンライン上で陳情できる「青瓦台国民請願」というシステムがある。そこに「n番部屋事件の容疑者の身分を明らかにし、フォトライン(報道陣のカメラの前)に立たせろ」という要請が立ち上がり、同意が270万以上集まった。2017年8月に始まったこのシステムでは歴代最多の数字だ。

 そこで、チョ・チュビンはこう口にした。

「私から被害を受けたすべての方に心から謝罪いたします。止められなかった悪魔の人生を止めてくださり、感謝しています」

 少なくとも7つの罪に問われるだろう、と見られている。児童ポルノ製作罪、強制暴行罪、脅迫罪、強要罪、詐欺罪、個人情報提供罪、性暴力処罰特例法違反。韓国現代社会で最悪の性犯罪の犯人はどんな人物なのか。