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新型コロナで「テキヤは商売あがったり」 暴力団業界を支える「洋上シャブ密輸」というシノギ

2020/04/05

genre : ニュース, 社会

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「海外からの覚醒剤の密輸入や国内での密売は、ほとんどは暴力団が関与しているとみられる。いまや暴力団業界の重要な収入源になっている覚醒剤を、業界に関係ない人間が大量に密輸したり、街で売買していたら、暴力団に即刻潰されるのは火を見るよりも明らかだ」

 覚醒剤は、ほぼ全量が海外から密輸されている。組織的に手荷物などに隠し入れて飛行機に乗り込み空港をすり抜ける方法のほか、近年流行のインバウンドに便乗し、国際宅配便で民泊先を届け先にする新手の密輸も発覚している。

シャブを洋上に投下、GPSで回収

 大量の覚醒剤押収の背景について、組織犯罪を担当している別の警察庁幹部は次のように語る。

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「根強い覚醒剤の需要が存在しているのはもちろんだが、供給ルートとして、国際的な薬物犯罪組織が、暴力団を相手として取引を活発化させていることが考えられる」

6代目山口組組長の司忍 ©時事通信社

 前出の山口組系の古参幹部は、入手ルートについて「大量に持ち込めるのは『瀬取り』だ」と明かす。

 瀬取りとは、洋上で船舶同士の荷物を積み替えることを指す。国連安全保障理事会の経済制裁によって物資に困窮している北朝鮮が、制裁の目をくらませて石油を密輸する手段としていることでも知られている。瀬取りで覚醒剤を密輸する場合は、手荷物とは違い、100キロ単位で一度に大量に持ち込めるため、効果が大きいという。

 かつても北朝鮮からの密輸が日本海で多く行われ、警察当局によって大量摘発されたケースがあった。1999年には当時としては過去最多の年間約2000キロの覚醒剤が押収されたこともあった。

 当時の取り引きと現在では、何がちがうのか。

「かつては、取引相手と洋上で合流するのが大変で、かなり不確実な取り引きだった。しかし、今は合流する必要がない。覚醒剤を梱包した荷物にGPS発信機を取り付けて、指定の海域に荷物を投下してもらう。受け取る側は発信機を追いかけて回収する。確度はかなり高いし、何より安全だ」(同前)