無観客の大相撲を見て研究
お客へ伝える情報には、正確さが求められる。審判はハンドサイン、指で反則の種類と該当選手を示すが、それを「正確に見る」のは大前提だ。その上でRisukeはプラスアルファの気配りをしている。
「9割8分はそのままですけど、審判の指を見て『あれ、違う』と思うことがあります。そういうときは、隣に記録員がいるので『今は何番?』と確認します」
もし審判が間違えていたならば、敢えて伝えない。オフコートのプロには、そのような冷徹さも必要だ。
3月13日にプロ野球オープン戦、14日と15日はBリーグと立て続けに無観客試合の仕事が入っていた。初の経験を前に、彼はテレビで無観客の大相撲大阪場所を見て研究している。
「行司の方が仕切りの少し前、力士の息が上がってくるくらいのところで、少しうつむいて目を閉じて集中しているように見えたんです。もしかしたら僕が集中するのに使えるかなと思いました」
無観客アナウンスで感じた戸惑い
キャリア初の「無観客アナウンス」となった13日のメットライフドームでは、まずこんな戸惑いがあった。
「スターティングラインアップを1番から9番、監督までアナウンスをします。普段は『1番センター金子侑司背番号7』といえば、応援団が太鼓を叩いてトランペットを吹く。その間を待って終わるくらいで、次のバッターに行っていました。それがないので、知らない間にものすごく早くなっているんです」
14日の船橋アリーナでは、Bリーグ史上初の無観客試合を担当した。観客がいないだけでなく、段取りにも普段と違いがある。なかなか気持ちは高まらない――。そこでRisukeは奇策に打って出た。
「どうしようもなかったので、開始約10分前に何回か腕立て伏せをしたんです。ちょっと心拍数を上げて、無理やり肉体的にテンションの上がった状態を作るみたいなことをやってみました」
もっともその効き目は……。
「正直そこまで効果があったかは疑問です(笑)」