プロスポーツは選手だけのものではない。ファンがいて、その魅力を高める組織があってこそ、エンターテイメントは形になる。しかしこの2月末から3月、新型コロナウイルスの感染が広がる中で、いくつかの競技は不完全な形で試合を行った。

  Risukeは千葉ジェッツのアリーナMC、埼玉西武ライオンズのスタジアムDJを務める声のプロフェッショナルだ。今回はバスケット、野球の2競技で無観客試合を経験し、3月15日は審判の発熱による試合中止というハプニングにも遭遇した。日頃はファンに言葉を届けていた彼が、閑散とした会場で何を感じたのか。今回はそのような興味から、インタビューをお願いした。

Risukeさん(左) ©︎Risuke

アリーナMCの大切な役割とは

 お客の感情を引き出す――。それはアリーナMCの大切な役割だ。バスケではこういう工夫をする。

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「プレータイムに恵まれない選手が『今シーズン初出場』となったときは、ちょっと溜めたりします。何人かが同時に出てきたら普段は番号の若い順に言うんですけど、その選手を最後に持っていく。ブースターの皆さんも分かっているので反応してくれます」

 彼がジェッツのアリーナMCに就任したのは、クラブ発足直後の2011−12シーズン。今は船橋アリーナで落ち着いたアナウンスを聞かせてくれる彼だが、そこに至る歴史があった。

「ジェッツは今でこそ人気チームになっていますけれど、bjリーグ時代とかNBLの最初はお客が1000人とか三桁の試合が多かった。そのときは『ゴー!ジェッツ! 』とか『ディーフェンス!』のコールをしつこいくらいしていたんです。でも今はそれも試合開始後の1回目とか、クォーターが始まるときくらい。何年かかけて意図的に減らしていっています。MCは喋る職業ですけど、僕の中では口数が少ないほうがいいと考えている。自然発生的に盛り上がるのが至上です」