(3)それでもやはりロックダウンをすべき
3月末からの東京都知事を始めとする各地の首長や日本医師会などからの再三の要請にもかかわらず、官邸の動きは遅かった。4月6日になり、ようやく安倍総理は翌7日に緊急事態宣言を出すことを表明した。総理は「可能な限りの外出自粛に全面的に協力」を要請するも、「日本では、緊急事態宣言を出しても、海外のような都市の封鎖を行うことはしない」「そのようなことをする必要もないというのが専門家の皆様の意見だ」と述べた。さらに、「経済社会活動を可能な限り維持しながら、感染拡大を防止していくという、これまでの日本のやり方には変わりない」ことを強調した。経済対策は108兆円と大規模になっている。しかし、あくまでも自粛を軸とし、これまでと大きく変わらないのであるならば、緊急事態宣言の意味があまり無いのではないのではないか。
その理由はデータ分析からも明らかだ。Google社によると、日本で外出自粛要請が出た3月26日以降、在宅勤務はわずか9%、交通機関の利用率の減少は40%程度であった。英国の場合、ロックダウンが宣言された3月23日以降、在宅勤務は60%以上、交通機関の利用率は80%減っている。欧州のように在宅勤務が進んでおらず、同調圧力の強い日本の場合、外出自粛要請のみで今回の感染を抑えることができるだけの十分な社会的隔離(80%の接触減)はほぼ不可能である。それが可能なのはロックダウンのみである。
(4)日本でもロックダウンは可能
ロックダウンの目的は感染爆発による患者数の急増を抑え、感染ピークを遅らせることだ。もちろん、ロックダウンは、社会的にも政治経済的にも大きなコストだ。しかし、医療崩壊が起こり、社会が混乱すれば、多数の犠牲者が出る。それを抑えるためには、結局ロックダウンをしなければならない。対応が遅れれば遅れるほど、経済的被害も甚大になる。
さらに強調すべきことは、ロックダウンの効果は数週間しないと表れてこないことだ。英国における効果も来週以降検証されることであろう。インペリアル・カレッジの欧州大陸でのロックダウン効果の分析では、感染性を平均50%以上も下げるとしている。それ以外の社会的隔離などの効果は残念ながらそれほど大きくはない。実際、イタリアではその効果が少しずつ出てきているようである。