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 もちろん日本の法律で外出禁止を強制することは難しい。しかし、現在、英国でも、実はそれほどの強制力は無いが、多くの国民は外出禁止を守っている。主な罰則は、集会をしていれば警官が制止し、罰金は30ポンドくらいだ。ロックダウンの中身も国によって様々だ。そして、外出禁止生活も意外と慣れるものである。筆者は、読書や執筆や家事の時間も増え、ネット会議で仕事は可能、1日1回は必ずジョギングはできるし、生活必需品も買いに行ける。それでも、人々は外出禁止を基本的に守っている。あたかもそれが新しい生活スタイルであるかのように。ロックダウンは必ずしも断絶や萎縮ではない。それは、連帯とイノベーションの基盤となるかもしれないのだ。毎週金曜日の夜8時、英国のすべての国民が、ロックダウン中に勤務し続ける医療従事者、スーパーの店員、地下鉄やバスの運転手などへ一斉に拍手をするのは感動的だ。もちろん、ロックダウンによって影響を受ける人々への迅速な経済的支援が必要だ。

閑散とするロンドン・リージェントストリート ©iStock.com

 なぜ英国の人々は行動を大きく変えたのだろうか。それは、3月23日、ボリス・ジョンソン首相のわずか6分のテレビ演説による危機感の共有と国民への断固としたメッセージがその大きな要因のひとつであろう。彼は、「国家的危機の瞬間」に直面していると述べ、「国民保健サービス(NHS)」が破綻しないように維持し命を助けるために、より厳しい行動制限をとらなければならないと強調した。「自分は英国民に対し、とてもシンプルな指示を出します。それは、家にいてください、です」と。そして、「医療を守り、命を救うために、家にいましょう」というメッセージを繰り返し伝えた。

ロックダウン下のロンドン・コヴェント・ガーデン ©iStock.com

(5)想定外を想定し、臨機応変に方針転換を

 今、我が国のリーダーがすべきことは、危機感の共有と国民が一致団結してこの事態に立ち向かわなければいけないことを明確に示すことではないだろうか。緊急事態宣言、ロックダウン、都市封鎖という言葉遊びではなく、何のためにいま家にいる必要があるのか、ということをシンプルかつ真剣に伝えることだ。「今までとそれほど変わらない」というメッセージは、逆に、人々の危機感を緩めてしまい逆効果にならないか。

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ロックダウンのイタリア・ローマ ©iStock.com

 また、感染フェーズに合わせて戦略を変えることも重要だ。一つの戦略に固執して臨機応変に方針を変えられないところに日本の「失敗の本質」がある。初期には非常に効果のあったクラスター対策も、大都市では既に限界にきている。検査も医療崩壊を防ぐために(医療従事者の保護、院内感染の予防、軽症者の自宅や施設における隔離)、今すぐ拡充すべきであることは明らかだ。クラスターを追っているうちに市中感染・病院感染が広がり、患者急増の前にもう医療崩壊が始まっている。今こそ、大幅に戦略を転換すべきだ。