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布マスク2枚問題で「今の政権内の意思決定」が見えた

「経済産業省出身の今井氏と警察庁出身の北村氏」とあるので、今回布マスク配布を発案した「経済官庁出身の官邸官僚」は今井氏のことではないだろうか。

 さらにこの読売の記事の読みどころは、首相は「令和おじさん」として注目を浴びた菅官房長官に距離を置きはじめ、そのため今井&北村氏が、

《官邸内で重みを増したのは、昨年9月だ。今井氏は政策全般を担当する首相補佐官の兼務となり、北村氏は外交・安全保障政策の司令塔となる国家安保局長に昇格し、前面に出やすい立場となった。》

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 とある。布マスク2枚問題はその是非とは別に「今の政権内の意思決定」が見えた案件だったことがわかる。

菅義偉官房長官 ©文藝春秋

 ではその意思決定はどのように判断されているのか。ここであらためて注目したい記事がある。

「ネット上に批判、政府二転三転 前例なき対応、首相見切り発車」(朝日新聞2月19日)

 1月末の武漢へのチャーター機派遣を検証した記事だが、こんな気になる「証言」がある。

《「ネットでこう批判されているぞ」「テレビの全チャンネルで言われている」――こんな官邸幹部の反応が、政府の新型肺炎への対応に影響していると官邸関係者は証言する。》

首相官邸 ©文藝春秋

 首相官邸がSNSに力を入れているのはこれまでも言われてきたが、今回のコロナ対策では別の意味でネットを気にしていたのだ。

 つまりブレーンの判断の「源」が、政策論よりネットの反応が大という可能性すら考えられる。支持率重視という姿勢が。

 しかし布マスク2枚はネットでもウケなかった。マスク不足のサプライズとして発表したのだろうけどスベった。

 なら、ここから見えることは一連のコロナ対応の「意思決定」の過程や可視化はやっぱり大事だということだ。

謎の2020年にしてはいけない

 政府の対応を「一生懸命やっているのだから」という人もいる。しかしこれは警戒したい論理だ。

 たとえば、

「新型コロナ『歴史的緊急事態』で記録は消されるのか 見え隠れする『桜』の手法」(毎日新聞WEB3月22日)という記事はコロナ対応で、安倍政権が「記録」と「議事録」を巧妙に使い分けていると指摘している。

 意思決定のプロセスがあいまいだと、同じような状況を迎えた後世の人々が参考にしづらい。

 あのとき誰が決めたのか、なぜそういう判断をしたのか、何か説明されていないものはないか。

 謎の2020年にしてはいけない。未来の日本人に迷惑をかけることになる。