3月17日にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに出た研究では、実験室内の密閉空間では、エアロゾル内のウイルスは、3時間後にも活性が見られたと報告されている(※4)。
3月26日にJAMAに掲載された総説では、くしゃみや咳で排出された飛沫は乱気流ガスとなり7-8メートルは拡散するので、1-2メートルの社会的距離戦略は、飛沫の拡散範囲を過小評価している可能性があり、マスクの使用法にも影響をもたらす可能性があること、マスクに関して、乱気流ガスに関してテストがなされなければならないことに言及している(※5)。
また、新興感染症と21世紀の健康脅威に関する常任委員会の委員長を務めるハーヴェイ・ファインバーグ氏は、ホワイトハウス科学技術政策局のケルヴィン・ドログマイヤー局長に宛てた4月1日の手紙の中で、「最近の研究では、咳やくしゃみだけではなく、通常の呼気からのエアロゾルにもウイルスが含まれる可能性」について書いている(※6)。さらなる研究が必要ではあるが、会話するだけ、息するだけでも感染する可能性をファインバーグ氏は指摘しているのだ。
風邪のコロナウイルスに対して、マスクが効果ありとする最新研究
4月3日に科学誌「ネイチャーメディシン」に掲載された香港大学の論文では、インフルエンザおよび、通常の風邪のコロナウイルス感染症(新型コロナウイルスではない)にかかった246人の小児と成人において、マスクの有無でランダム化比較試験を行った。
結果からは、サージカルマスクは飛沫に含まれるインフルエンザウイルスRNA、飛沫およびエアロゾル中のコロナウイルスRNAの検出を有意に減少させ、サージカルマスクが、症状のある人からのヒトコロナウイルスやインフルエンザウイルスの感染を防ぐことができるのではないか、ということが示唆された(※7)。
「布マスク」にも飛沫飛散防止効果がある可能性
これまでに検証されてきたマスクの効果は、主として使い捨ての「サージカルマスク」に関するもので、「布マスクがどれほど効果があるか」は、実はエビデンスは少ない。
2013年にケンブリッジ大学で行われた21人の健康な人を対象とした研究では、自家製布マスクは、医療用マスクよりも劣るが、何もしないよりは飛沫飛散防止効果がある可能性が示唆されている(※8)。
また、2015年に、布マスクと医療用マスクを比較したランダム化比較試験の結果が発表されている(※9)が、医療従事者において、布マスクと医療用マスク着用を比較したところ、感染予防において布マスクが劣っていたという結果だった。また、フィルター能力の低さ、再利用に感染のリスクがあるという指摘もなされている。
しかし、これは、医療従事者を対象とした研究であることと、マスクを着用していたのが、医療従事者側であって患者側ではないことに注意する必要がある。