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目の前で車が転落したのに沈黙していた目撃者

 ご遺体が発見される経緯を時系列に沿ってみていくと、より謎が深まる。彼女らが消息を絶ったのが1996年、それから18年後の2014年に、県警は目撃者が複数いるとの情報を得ている。さらに5年後の2019年に目撃者3人を特定、今年に入ってから事情を聞いていた。その内容を元に海底の捜索を行い、車とご遺体が発見されたのだ。

 目撃者から聞き取った話は、とても24年前の出来事とは思えないぐらい具体的なものだった。1996年の大型連休中の深夜、発見場所付近の駐車場で車に乗った若い女性2人に声をかけようとしたところ、突然後ろ向きに発進して海に転落した。目撃者は怖くなり、通報せずにその場を立ち去ったという。

フェンスや看板も落書きだらけだ

 おそらく多くの人が感じることだと思うが、人が乗った車が目の前で海に転落したのに、通報せずに立ち去るものだろうか。その時点で通報していれば、彼女たちは助かっていた可能性もある。警察に通報できない何らかの事情があったと思うのは、下衆の勘ぐりだろうか。また、県警が目撃者の存在を把握してから聞き取りを行うまで、さらに6年を要している。全てにおいて、あまりにも時間がかかりすぎている。

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謎は永遠に解明されることはない

 警察の発表によると、車内から発見された人骨は死後10年以上が経過しており、死因はおろか年齢や性別も特定できなかった。車の識別番号や車内にあった所持品から、身元を推定したようだ。死因が特定できない以上、もしも殺人等の事件だったとしても、立証することは不可能に近い。立件できるとしたら死体遺棄罪ぐらいだろうが、既に15年以上が過ぎ、公訴時効が成立している。

 坪野鉱泉の廃墟との関連性、あまりにも長い時間の経過、そして24年後の目撃証言。ご遺体の発見で一応の解決をみたが、全ての謎が解明されたわけではない。むしろ、謎はさらに深まったともいえる。しかし、警察が事件として扱わない以上、それらは今後も解明されることはないだろう。永遠に。

 

 19歳の少女が亡くなり、その後24年もの長い間、冷たい海底に沈んでいた。彼女たちが生きていたら、今年で43歳だ。その無念、ご遺族の心境は、察するに余りある。心からお2人のご冥福をお祈りしたい。

写真=鹿取茂雄