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 かつて強大な影響力を持った厚労族議員ですらすっかり影が薄くなった一方、和泉洋人首相補佐官とのさまざまな疑惑が週刊誌に報じられた厚労省の大坪寛子審議官が、疑惑のさなかにコロナに関する会見に登場する奇妙な現象が起きている、と舛添氏は呆れる。

科学的根拠に乏しい判断

 未知の感染症に向き合う政策には正しい科学的、疫学的知識が不可欠だが、安倍首相の判断にはこうした科学的根拠が乏しい、と舛添氏は指摘する。

「一斉休校を決める際に行った2月29日の会見では『子供たちの健康と安全』を強調していましたが、中国における5万6000の症例を分析したWHOの報告によれば、18歳以下は全症例の2.4%に過ぎず、ほとんどが軽度とされています。あの会見は『子供を守る』と言えば世間受けがよい、という狙いが透けて見えました」

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会見にしゃしゃり出た大坪寛子審議官 ©共同通信社

 ちなみに、同じく3月半ばから一斉休校を決めたフランスではオリヴィエ・ヴェラン保健大臣が子供の健康リスクは低いことを指摘した上で、「子供同士が一緒に遊ぶと濃厚接触しやすいし、帰宅して両親や祖父母などに感染させる可能性がある」と休校理由を説明していた。舛添氏は言う。

「科学的根拠を示して国民に呼びかける先進各国の指導者と比べると、安倍首相は専門家にも諮問せずに一斉休校を決め、休校措置を解除する際にもなぜ解除するのかという根拠は語られませんでした」

 こうした行動原理の裏側に、「内閣支持率稼ぎ」という官邸官僚が重んじる“不純な動機”がある、と舛添氏は見る。一斉休校、緊急事態宣言、マスク配布――いずれも危機対応で支持を集めた鈴木直道北海道知事のイニシアティブで実現した政策だったからだ。

出典:「文藝春秋」5月号

 新型コロナ対策が、「人命」ではなく政治的延命に主眼をおいた思惑で動いている、との指摘で、こうした分析を舛添氏は、「文藝春秋」5月号および「文藝春秋 電子版」に「安倍官邸『無能な役人』の罪と罰」と題して寄稿している。

 連日、東京など大きな都市で感染者が増え続けている。今回のパンデミックは長期戦を覚悟せざるを得ない。危機にいつまでも対応できないでいる政権の責任が問われるのは、これからだ。

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文藝春秋

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安倍官邸「無能な役人」の罪と罰