それに加えて、最近次々と起きている医療従事者の感染、入院患者の感染で、機能縮小している主要医療機関も都内だけで複数あり、元々脆弱な医療システムがさらに脆弱になっている。クラスター対策とウイルスの拡大ばかりに気を取られているうちに、救命のための最後の砦である集中治療は崩壊前夜だ。この危機を政府や専門家会議は気がついているのだろうか。
全国でロックダウンを実施し、集中治療専門医による特別部隊を
命を救うためにまずやるべきことは、今こそ、全国でロックダウンを実施することだ。そして、各都道府県は集中治療のベッドとスタッフの確保を大至急で行う。集中治療専門医が中心になって、集中治療経験のない医師やその他の医療従事者を集めて特別部隊を緊急招集する必要がある。加えて、国を挙げて人工呼吸器を増産し確保することも重要である。
こういった試みの一環として、東京医科歯科大学では3月末よりプロジェクトチームを結成し、大学附属病院と診療スタッフを大規模に再編成し、コロナ用集中治療室および病棟を感染爆発時に備えて最高で150床稼働させることを目的とし、急ピッチで準備を進めている。また埼玉の人工呼吸器製造会社・メトランでは、既存の動物用人工呼吸器を基盤としたパンデミック用簡易型人工呼吸器を至急で設計し、日本とベトナムの生産拠点で数カ月以内に数千台から1万台の規模で製作するプランが進行中である。近年の人工呼吸器は高機能が仇となり、月当たり100~200台程度の生産ラインが通常であるが、緊急事態においてはハイテクな人工呼吸器の生産を待っている時間はない。
軽症者は自宅や代替施設で管理することを徹底した上で、集中治療を拡充することで重症者の急増による医療崩壊の可能性を大幅に減らすことができる。もちろん院内感染を防ぐために、医療従事者への検査と防護服の供与は欠かせない。そして、医療崩壊の可能性を減らすことができるのであれば、ロックダウンをしなくとも感染者の増加を乗り切ることができるかもしれないのだ。この冬、第2波の可能性も予想されている。喫緊の感染爆発を乗り越え、次に備えるためにも、戦時下の医療への準備と集中治療の拡充を急ぐべきだ。
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謝辞:本稿を準備するにあたり高田正雄(インペリアルカレッジ・麻酔集中治療科主任教授)、林淑朗(亀田総合病院・集中治療科部長)、遠藤拓郎(国際医療福祉大学救急医学)の各氏にアドバイスをいただきました。医療者に感謝を。
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