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「3密」「夜のクラスター」さえ避ければ良いという誤った認識

 だが、その後、政府は飲食店を含む休業要請を見送った。「3密」や「夜のクラスター」を繰り返すことで、それさえ避ければ良いという意識も出ている。交通遮断はなく相変わらずサラリーマンの通勤は続き、外食は継続される。繰り返すが、今一番必要なことは、「家にいる」ことなのだ。

 緊急事態宣言後のデータ(Yahoo! JAPAN)では、確かに人出は減少傾向にあるが、東京の繁華街で60%減、その他の地域では30~45%減にとどまっている。やはりロックダウンをしなければ、厚労省クラスター班の目指す8割の接触減はおろか、有効な社会的隔離さえもままならないことが明確だ。さらに悪いことに、クラスター対策で検査を抑制してきたために経路を追えない市中感染と院内感染が増加し続けている。ただでさえ院内感染で崩壊しかかっている各自治体の医療に感染者急増の負荷がかかる。医療崩壊は待った無しだ。

集中治療中の患者が並ぶ衝撃的な光景。2020年3月23日、イタリアのミラノの南東・クレモナにあるクレモナ病院の集中治療室で、コロナウイルスウイルスに感染した最も深刻な患者たちと治療する医療者 ©時事通信社

今の日本の医療では新型コロナウイルスの感染爆発に対応できない

 日本の新型コロナウイルス対策による報告死者数は他の国に比べて少ない。それをもって日本のこれまでの対策は順調だ、感染爆発などは起こらないと論じる方がいる。しかし、日本の医療は全くその逆の状態であり、感染爆発が起これば多くの犠牲者が出る。日本の医療は新型コロナウイルスの重症患者を救うための体制が整っていないからだ。

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 多くの読者は、コロナは単なる感染症であり、感染症専門家に任せれば安心と思うであろう。しかし、それではまだこのウイルスの怖さを理解していることにはならない。新型コロナウイルスに感染した人の8割は無症状か風邪のような症状で終わる。しかし、重症化する例では、発症から1週間前後で肺炎症状が出てくる。ここまでは基本的な感染症の知識を持つ医師ならば対応可能だ。必要があれば酸素吸入が行われる。

人工呼吸器 ©iStock.com

 しかし、新型コロナウイルスの厄介なところは、さらに進むと重度の呼吸不全、すなわち急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という状態に陥り、人工呼吸器管理による集中治療の対象となることだ。つまり、最後の砦は集中治療医なのだ。最近、筆者の所属する大学の関連病院から退院した英国のボリス・ジョンソン首相が集中治療室で管理されたのは、呼吸不全に陥る可能性を恐れてのことであった。幸い、彼は酸素吸入だけで生還した。