14日の訓練で正恩氏の身辺に異変が起きた可能性
一部には、14日の訓練で正恩氏の身辺に異変が起きたのではないかという指摘も出ている。視察先の兵器が暴発した、あるいは、一部兵士の反乱があったなどという臆測だ。
ただ、米韓情報当局によれば、北朝鮮軍の電波情報などに異常はみられないという。衛星写真でも特に変わった動きはない模様だ。また、15日午前零時に実施されたとみられる、北朝鮮幹部らによる錦繡山太陽宮殿参拝の写真をみてみると、李炳哲党副委員長が写っていた。李氏は党で軍需工業を担当しており、正恩氏が指導した3月21日の戦術誘導兵器の射撃訓練などに立ち会ってきた。米韓関係筋によれば、李氏は4月14日朝に江原道で行われた地対艦巡航ミサイルなどの発射訓練にも同席したという。金正恩氏の身辺に異変があるほどの事態になって、李氏だけが平壌に戻って参拝したという状況も、なかなか想像しにくいところだ。
依然「新型コロナの感染者は発生していない」と説明
そして、世界中を騒がせている新型コロナウイルス問題だが、北朝鮮は依然、感染者は発生していないと説明し続けている。関係者は「正恩氏のコロナ感染だけはないだろう」と異口同音に語る。最高指導者の長寿・健康のための研究機関、万寿無彊(万年長寿)研究所で働いた経験がある金炯洙博士によれば、平壌には8号診療所という、最高指導者と同席する可能性がある人物の健康状態を調べる専門機関がある。8号診療所が保有する巡回バスには、レントゲン検査や検便、採血検査などの装備が備わっている。最高指導者が感染症などにかからないよう細心のチェックを行うという。
北朝鮮政府で働いた経験がある脱北者の1人は「正恩氏は、現在も江原道か咸鏡南道の招待所にいるのではないか」と語る。
「錦繡山太陽宮殿に参拝しなかったのも、権力継承から10年近くになり、独自色を出したい思惑があったのかもしれない」
それでも、北朝鮮が、金正恩氏が現地指導した演習を公開しない理由は謎のまま残っている。この謎が解けるまで、あるいは金正恩氏が再び、公開の席に姿を現すまで、しばらく関係国の情報機関関係者の緊張は続きそうだ。