「休校中の子どものインターネット利用が増え、犯罪に巻き込まれるなどのリスクが高まっている」――、4月15日、国連児童基金(ユニセフ)は世界各国に異例の警鐘を鳴らした。
未成年者のスマートフォン所有率が93.7%(『第13回未成年者の携帯電話・スマートフォン利用実態調査』デジタルアーツ)と高い日本では、犯罪被害に加えて過度な利用による「廃人」化も懸念される。
「廃人」とはオンラインゲームのヘビーユーザーに健康障害などの問題が生じる状態を言う。最近ではSNSや動画視聴への依存も深刻化し、休校中の子どもたちも例外ではない。
「3月には殴り合いのケンカをして警察を呼びました」
眠気を払うエナジードリンクの空き缶や課金用のiTunesカードの脇に、使用済みのマスクが置かれている。東京都に住む由美さん(仮名・43歳)は、中学2年生の長男(13歳)の部屋を覗き見てため息をついた。以前からオンラインゲーム好きな息子だが、休校中は昼夜逆転して夕方まで起きてこない。
「1日15時間、フォートナイトというオンラインゲームをやっています。自室のパソコンを使っているので、その間はこもりっぱなし。食事時に部屋から出るよう促しても、今度はスマホでゲームの実況動画を見つづける。私が注意すれば親子で口論になり、3月には殴り合いのケンカをして警察を呼びました」
「非常事態の今はゲームという救いが必要かも」
不安が募る由美さんだったが、休校の長期化に伴い心境が変わる。「世間一般の子育て観から解放されたほうがいい」と思考を切り替えたのだ。
「私は広告会社でフルタイム勤務。長男と小学6年生の長女だけで留守番させているので、どうしてもネットやスマホ頼みになります。彼らだってどこにも出かけられず、狭い家の中で過ごしているわけだから、そりゃゲームくらいやりたいでしょう。明日学校があるというなら体を張ってでも止めるけど、非常事態の今はゲームという救いが必要かもしれない。もう飽きるまでやればいいんじゃないかと」
閉塞感が高まる日常では、夢中になれるものがあったほうが勝ち、そんなふうに思えてきた。由美さんの切り替えに後押しされたのか、長男は水を得た魚のようにゲームに没頭。軟禁生活をものともせず、「もっと休校がつづけばいいのに」とすっかり明るいという。