暑い夏。少しでも涼しいところに行きたいものだ。とは言え、屋内ばかりでも味気ない。というわけで、標高が高ければ涼しい……という理屈から、東京の鉄道で最も高地を走る青梅線の旅をご紹介しよう。
標高はどんどん上がり、奥多摩駅は海抜343m
青梅線は、中央線の立川駅から分岐して奥多摩駅まで、多摩川に沿って結んでいる路線だ。立川駅から青梅駅あたりまでは中央線に直通する列車もたくさん走る住宅地で、そこから先は雰囲気が一変する。左手に多摩川を見ながらカーブを繰り返しつつどんどん標高を上げていき、終点の奥多摩駅は海抜343m。多摩川の渓谷も迫るなかなかのド迫力の車窓風景が広がっているのだ。
で、実際に青梅線に乗ってみると、ローカル線の旅気分……と言いたいところだが、なんとハイキング客でギッシリ満員。確かに乗ってみるまで忘れていたが、青梅線は御岳山や高水三山、日原鍾乳洞などへのアクセス路線で、夏休みシーズンは行楽客で賑やかなのだ。そもそも、日中のダイヤは平日の45分間隔に対して土・休日は30分間隔とちょっと多めだし、新宿から奥多摩まで直通する「ホリデー快速おくたま」も走っている。東京では珍しい、“行楽仕様”の路線なのである。
そんな青梅線の終点、奥多摩駅。山際ギリギリにあるホームは少し高い場所にあり、階段を降りて駅舎に向かう。駅舎は山小屋ロッジ風、駅前からは日原鍾乳洞に向かうバスが出ていたり、ハイキング道の「奥多摩むかし道」があったりと、まさしく“行楽駅”である。肝心の気温も、都心と比べれば2~3度は低い感じ。木陰に入れば風も爽やかで、さすがの奥多摩だ。
そしてこの奥多摩駅、鉄道ファン的にも楽しみは満載。奥多摩むかし道のあたりまで歩いてちょっとだけ山道を登っていくと、そこにはなんと古びたレールが! そう、奥多摩には廃線跡があるのだ。これは、小河内ダム建設のために設けられた貨物路線で、現役時代は1952~57年までと短いけれど、東京都民の水がめの建設を支えた重要な路線なのだ。と、ワクワクする廃線跡だが、いつ野生動物が現れてもおかしくないところなのであまり長居しづらいところ。