民衆の力をバンバン爆発させるストライキは芸術
―― 歌を歌うことも、本来はそれ自体が政治的になっても、なんらおかしくはない。
栗原 はい、自然なことだと思うんです。100年前のアナキスト、大杉栄は「民衆芸術論」ってのを提唱していました。芸術のよしあしを一握りのプロがきめてしまうんじゃなくて、きょうの盆踊りみたいに、誰でも参加できるようにしていく。ひとりひとりが好き勝手にうごきまくる、なんにもしばられずに表現していく、そういう民衆の力をバンバン爆発させていくのが芸術ってもんでしょう、と訴えたんですね。
大杉栄は、労働者のストライキも民衆芸術だと言っています。会社の経営者はもちろんのこと、労働組合でも指導者が、おまえらこの闘いで勝つためにこうやって動けと言ってしまうと、民衆の表現の力を黙らせてしまう。会社と労働組合のトップが交渉するから、おまえらおとなしくしていろと。大杉は、それじゃダメだと言うんですね。ひとりひとりの自発的な表現の力を大事にしようと。正しい闘いかたなんてない。ほんとうにクソみたいなあつかいをうけたなら、がまんしなくていい。ケンカだ、やっちまえと。で、ほんとうにやる。とつぜん経営者に殴りかかるとか、会社の機械をぶち壊すとか、火をつけちゃったりとか(笑)。そういうことをすると会社からも労働組合からも、おまえは無用だ、使えないと言われるんでしょうけど、そんなの関係ない。なんにもしばられずに、ひとが自由奔放にうごきまわる、踊りはじめる。そういうのを身体で表現するんですね。ストライキは芸術です。
―― 栗原さんは、どうして長渕剛を好きになったんですか?
栗原 小・中学生のころは「とんぼ」や「親子ジグザグ」などのドラマに出てる俳優のイメージしかなかったんです。でも高校生のときに、ずっと尾崎豊が好きだったんですけど、友達から「尾崎好きなら絶対長渕も好きになる」と言われて聴き始めたんです。「反社会」だからって(笑)。その頃出てた長渕さんの『いつかの少年』というベストアルバムを貸してくれたんです。
―― 今年の夏は、長渕さんの武道館公演が行われます。
栗原 今年は富士山と同日の8月22日の1日だけです。武道館では、いくら延びても2、3時間の公演ですから、その点、体力的には安心ですね(笑)。
―― 栗原さんも、もちろん……。
栗原 行きます! 「シャー! シャー!」と拳をつきあげて、生ける上人からエネルギーをもらってきます。
くりはら・やすし/1979年、埼玉県生まれ。専門はアナキズム研究。現在、東北芸術工科大学非常勤講師。著書に、『大杉栄伝―永遠のアナキズム』、『はたらかないで、たらふく食べたい―「生の負債」からの解放宣言』『村に火をつけ、白痴になれ-伊藤野枝伝』『死してなお踊れ 一遍上人伝』。趣味はビール、ドラマ観賞、詩吟。